日本のメーカーの展示
富士通はx86ベースのPrimergyも展示していたが、前面に展示されていたのは独自開発のSPARC64 XIfxプロセサを使うPRIMEHPC FX100スパコンである。昨年はPost FX10と仮称で呼ばれていたが、今年は正式名称がFX100と決まった。そして、今回は筐体とCPUチップのウェハも展示された。
NECは昨年と同様にSX-ACEスパコンを前面に出した展示を行っていた。同社は、直前に次世代スパコンのAuroraを発表したが、2017年の製品であり、関連する展示は無かった。
日立は新製品のSR2400/XP2を展示していた。展示されたのはPOWER8が2ソケットのノードだけであるが、クラスタ接続で大規模スパコンを構築できる。SR2400はすでに発表されているが、現在のXP1は20コア、3.42GHzクロックであるが、今回のXP2は24コア、3.52GHzクロックに性能が向上している。
米国の研究機関の展示
米国の研究機関や大学の展示は数多いのであるが、時間がないので、とても見て回れない。ハードはちょっと見れば、興味がありそうかどうかが分かるが、研究発表のパネルはそうは行かない。熱心な説明員に捕まると10分くらい掛かることもあり、これでは360もあるブースをカバーできないので、敬遠することになる。
ということで、ここに上げたのはDoE、NASA、そしてNSAのブースである。
DoE(エネルギー省)はローレンスリバモア、オークリッジ、ロスアラモスなどの研究所を傘下に抱え、Top500上位のスパコンを多数持っている。以前は、これらの研究所が別々に大きな展示ブースを構えていたが、経費削減のために、1つの政府機関の予算が50万ドルに制限されることになり、昨年から、DoE傘下のすべての機関で合同の展示ブースを設ける方式に変わった。
一方、NASAは政府直轄であり、1機関で50万ドルの予算が使えるので、独自ブースを構えている。DoEのブースは2000平方フィートで、1研究所にすると118平方フィートしかないが、NASAのブースは1200平方フィートであるので10倍の面積である。
もう1つ、写真を載せたのはNSA(National Security Agency)である。NSAは各国首脳の電話の盗聴で名前を知られるようになった機関で、大規模なデータセンターを持ち、ビッグデータの通信記録の解析や暗号解読、衛星写真の解読などを行っていると言われ、優秀なエンジニアを必要としている。このため、毎回、SCに2人の係官が座っているブースを出している。
ヨーロッパからの展示
ヨーロッパからの展示も数が多いのであるが、筆者が見たのはごく一部である。イタリアのEurotechやフランスのBULLのデザインはアメリカや日本とはセンスが違う感じがする。
中国からの展示
中国からの展示は、中国のスパコンとグリッドのサービスを提供する中国科学院超級計算中心や教育関係のグリッドを整備するChinaGridのような国家的な施策を推進する機関の展示はあるが、全体として、まだ、数は少ない。大学の出展は、天河2号の開発、製造を行った中国人民解放軍国防科学技術大学(NUDT)を別とすると、今年、初めて上海交通大学が研究結果を展示するブースを設けた。
また、企業としては、中国を代表するスパコンメーカーである中科曙光(Sugon)と浪潮(Inspur)がブースを出していた。
いずれにしても、Top500での中国の躍進を考えると、遠からず、中国の大学や研究機関からの展示が大幅に増加しそうな感じがする。
日本の研究機関の展示
日本の研究機関は順不同で、たまたま、撮影した順序で掲載している。また、写真の撮り忘れもあるかも知れませんが、悪しからず。
日本の大学の展示
日本の大学も順不同で、たまたま、撮影した順序で掲載している。また、写真の撮り忘れもあるかも知れませんが、悪しからず。
東京大学の Oakleaf Kashiwa Allianceの展示ブース。ここだけで東工大と同じブース面積で、平木研、生産技術研究所を含めると、東大のブース面積が国内の大学では最大 |
京都大学の展示ブース |
番外編:HLRSの展示の変化にみるSC展示のコストカット
HLRSはドイツのシュツットガルトにあるスパコンセンターで、ドイツの自動車業界との結びつきが強い。そして、自動車の周囲の空気の流れを解析し、走行安定性の改善や燃費の改善などに貢献しており、その研究の一端をSCで展示してきた。その展示の一環として、実物の自動車を展示会場に持ち込み、空気の流れを投影で示したりするというデモを行ってきている。
次の写真に見られるように2011年とそれ以前は、大型のトレーラトラックのような、一目を惹く巨大な車を持ち込んでいた。それが2012年にはポルシェのセダン、2013年にはアウディのセダンと車が小さくなり、今年はついに、車は車でも自転車になってしまった。
研究の価値はともかく、ドイツからこれらの車を運ぶコストは、トレーラトラック→セダン→自転車で大幅に下がっている筈である。
例年、コンテナ型のデータセンターやコンテナに通信機器を詰め込み、それにトレーラトラックを付けてSCの展示場に持ち込む会社が1~2社存在していた。しかし、今年はトレーラは1社も無かった。
DoEは17の研究所の展示を1つにまとめてしまうし、派手な人目を惹くアトラクション的な展示も少なくなり、大きな機器の展示も減っているような気がする。4~5年前と比べると緊縮ムードである。
Top500のシステムの更新の速度も遅くなってきており、HPCへの投資が抑えられてきているとすると気になる兆候である。