まるでスポーツカーのようなエッジの効いたデザインのトラクター、近未来を感じさせるコンセプトモデルの無人ショベルカーなど、ヤンマーは100年もの長い歴史を持つ企業とは思えない、"新しい"試みを次々と発表・展開している。

新本社ビル「YANMAR FLYING-Y BUILDING」発表会にて。画面左から、クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏、ヤンマーホールディングス取締役 兼 工業デザイナー・奥山清行氏、ヤンマー 代表取締役社長 長山岡健人氏、中央研究所長 川建治氏

これらはすべて、2013年よりスタートしたブランドイメージ統一プロジェクト「YANMAR PREMIUM BRAND PROJECT」によるもので、それを総合プロデューサーとしてとりまとめているのが、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏だ。「ヤン坊・マー坊」のキャラクターでお茶の間に親しまれていた同社のブランディングイメージは大きく一新され、デザインの力により、この変化は業界内のみならず広く一般に知られるところとなっている。

今回、新本社ビル「YANMAR FLYING-Y BUILDING」のお披露目や「次の100年」への計画が公開されたタイミングで、佐藤氏に同プロジェクトの今後の方針や"デザイン"に関する考え方について、お話を伺った。

佐藤可士和
1965年・東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年クリエイティブスタジオ「サムライ」設立。今回インタビューしたヤンマーの「YANMAR PREMIUM BRAND PROJECT」のみならず、ユニクロや楽天グループ、セブン-イレブンジャパンなど、数々の大手企業に対して総合的なクリエイティブワークを提供し、高い評価を得ている

――コンセプトモデルを量産化した新型トラクターなど、昨年の発表からかなり進展を見せていますね。今回発表された「次の100年」という大きなテーマをビジュアル面で表現するにあたり、どういったディレクションを行うよう心がけたのでしょうか?

「次の100年」というキーワードは、社長から「このことをイメージしてほしい」という依頼があったものなんです。本当に難しいテーマだなと思ったんですけど、手始めにこのテーマをムービーにしようと考えました。最初からムービーを作ってほしいと依頼されたわけではなく、ムービーを社内外に共有することから始めたいという動機で制作したものです。このムービーは、「テクノロジー」という特設ページで見ることができます。

ムービーの公開もその一環なのですが、今回の発表を機に、ヤンマー全体のWebサイトを一新しています。これはずっと水面下で行っていたことなのですが、まず、全体のデザインの統一を図りました。それに加え、「100年先」という壮大なテーマの記号になるようなものがひとつあった方がいいと思いまして、そこで考案したのが「YF2112」というキャッチフレーズとビジュアルです。

――「100年先」というテーマに対して、こうした象徴的なビジュアルを設定された理由は?

例えば、「次の100年プロジェクト」というように呼んでいても、浸透力に欠けるからです。昨年発表したブランドロゴの下にコード名をつけるように文字を配置し、「これが次の100年に向けてのテクノロジーを考える取り組みです」と象徴するようなものを作り、これを中心にサイトを構築していきました。

――「YF2112」は今後の展開においてもシンボル的に使われていくご予定ですか? そうですね。このタイミングで発表できなかった物事も数多く動いている状況なので。テクノロジー面の取り組みをきちんと発表していこうと想定しています。

「YF2112」ロゴ