エスキュービズム・テクノロジー(エスキュービズム)は、東京都・六本木にて、「Omni Channel Conference 2014(オムニチャネルカンファレンス)」を開催した。
エスキュービズム 取締役 真田幹己氏 |
基調講演には、良品計画の代表取締役会長兼執行役員 松井忠三氏が登壇し、無印良品の成長を可能とした「仕組みと風土づくり」を語ったほか、特別講演ではITアナリストの松浦由美子氏が、オムニチャネルの事例紹介や課題、今後の展開を紹介。
エスキュービズムでセールス&マーケティング部部長 兼 取締役を務める真田幹己氏は、丸善&ジュンク堂やハードオフコーポレーションでの事例を交えつつ、「オムニチャネル実現に必要な要素」を説明した。
組織と評価制度の変革がオムニチャネルを実現する
「オムニチャネル」は2011年、Macy,s CEOのテリー・ラグレン氏によって提唱される。同氏は、その取組みとして、CEO直下にマーケティング部門を置き、すべてをその傘下に入れるという「組織改革」を実施。その後、Web経由の売上を毎年40%ずつ増加させることに成功したという。
「昨今では、セブン&アイ・ホールディングスCEOの鈴木敏文氏が、次男の康弘氏をオムニチャネル推進室シニアオフィサーにアテンドし、ネットショッピング統合への強化策を打ち出しています。これも、発言権のある人物を中心に置くという組織改革の1つでしょう」(真田氏)
同社がカンファレンスにて公開した丸善&ジュンク堂の「導入事例インタビュー」にて、営業本部とインターネット事業を担う工藤淳也氏は、一部の部署に任せてしまうのではなく、オンライン・オフラインを含めた会社全体で取り組んでいこうという意識をつくることを重要視したと振り返る。
「ネットショップの担当と実店舗のスタッフがお互いの仕事と目標を理解し共有することが大切だと思います。そのために、みんなが意識するであろう評価制度に、ネットショップへの貢献・理解を組み込むことは、取り組みの一つとして有用だと考えます」(工藤氏)
これらの事例からエスキュービズムは、オムニチャネル実現には「組織と評価制度の改革」が必要だと述べる。
では、どのような組織への変革が求められているのだろうか。
影響力のある人物をアテンドし、コンセプトを明確にする「シンプルさ」
オムニチャネルを実現するには、実店舗を運営する部門やマーケティング部門、情報システム部門、Web・EC運営部門など各チャネル担当者の参画が必要であろう。一方、チャネルごと集まってくる情報の統合や物流面で使用するインフラ、基幹システムなど、さまざまなシステムも関係してくる。
「各組織やシステムを一度に統合することは、もちろん大変なことですが、部分的に変更していっても効果が得られない場合が多く見受けられます。やはり、オムニチャネル実現は、時間や費用を費やせば可能になるというわけでもないのです」(真田氏)
もう一つの導入事例として、ハードオフコーポレーションがある。同社取締役の山本太郎氏によると「シンプルな組織、シンプルな考え方」がオムニチャネル化をサポートしたのではないかという。
「リユース事業なので、やはり店舗が主役という考え方で成り立つ組織ではあります。正反対ともとれるネット販売においても、組織がシンプルであることと現場の力を最大限引き出すことをコンセプトに行ってきました」(山本氏)
また、同社はフランチャイズ店舗を抱えるため、直販店での実績を出してから理解してもらうなどの取り組みも実施。評価面では、社員やアルバイトに対し、売上だけに基づいた評価ではなく、行動に基づく頑張りを反映できる仕組みに落としこんだ。
エスキュービズムの真田氏は最後に、オムニチャネル化実現に必要な要素を、「全体に影響力のある人間をプロジェクトにアテンドすること」「組織・人事制度の改革の実施」「コンセプトの決定」「仕組みにまで落とし込むこと」の5つとして提示した。
なお、同カンファレンスで公開した導入事例インタビューの動画は、公式Webページにて閲覧することが可能だ。