物質・材料研究機構(NIMS)は11月12日、リチウムイオン電池の負極向け高性能SiOx複合ナノ粒子の高速生産プロセスを開発したと発表した。
同成果は、東京大学 大学院工学系研究科の神原淳 准教授、本間啓一郎氏、東京大学大学院工学系研究科 教授でNIMSフェローでもある吉田豊信氏らによるもの。詳細は物質材料研究論文誌「Science and Technology of Advanced Materials(STAM)」に掲載された。
リチウムイオン電池分野は、車載用途など、新たな応用展開に向け、炭素電極を超える高密度かつ高充放電サイクル特性を両立できる材料とその製造技術の開発が求められており、その実現手法として電極材料をナノレベルで構造体化することが知られているものの、高い生産性を有してナノ構造化を実現する製造手法がないことが問題となっていた。
今回研究グループは、プラズマスプレイ法に物理蒸着用の加熱蒸発とガス凝縮過程を加えた「プラズマスプレイPVD」法を利用することで、比較的安価な工業用SiOx粉末を原料としながら、急速蒸発とその後の急速共凝縮過程により、10nm程度のナノ粒子を高速かつ連続で製造することに成功したという。
また、SiOx系材料で高い電池充電容量を得るための課題であったOのSiに対する組成比xを低く抑える手法として、Ar-H2プラズマ中へ高い還元性を有するCH4ガスを添加することでxを効果的に減少させることを可能にしたほか、同蒸気の凝縮過程において生じる不均化反応によって電池サイクル特性に優れたSi/SiOコアシェル構造を容易に実現できることも確認したとする。
なお、また作製されたナノ粒子の電極特性を調べたところ、100サイクルの充放電後でも容量に大きな低下は無く1000mA・h・g-1で安定した高性能を示すことが確認されており、研究グループでは今後の展開が期待されるとコメントしている。