ウイングアーク1stでは10月10日の大阪を皮切りに、全国の主要4都市で帳票&BIカンファレンス「ウイングアークフォーラム 2014」を開催する。本記事では、ANAインターコンチネンタル東京で10月30日に開催する東京会場の中から、BIトラックの事例セッション「花キューピットが取り組む、ECサイトにおける受注分析 ~顧客起点マーケティングとWeb解析による課題改善への取り組み~」を紹介しよう。

データ活用に向けて社内システムを刷新

株式会社i879 システム企画室 マネージャー 兼 B2C事業部 星野靖東氏

i879は、全国4,200店以上もの生花小売加盟店から新鮮な花束やフラワーギフトを届ける「花キューピット」の中でも、インターネット販売に特化した「インターネット花キューピット」事業を手がける企業だ。住友商事と花キューピット協同組合の合弁会社として、花キューピット事業の一部を承継して2005年4月より営業を開始。法人向けの「ビジネス花キューピット」、複数の賛同者でソーシャルフラワーギフトを贈る「bouquet」、好きなアーティストに花や応援メッセージが贈れる「花musubi」などの姉妹サイトも運営している。

i879 システム企画室 マネージャー 兼 B2C事業部の星野靖東氏は「創業当時は、受注データを抜き出して分析するだけでも社外のシステム会社へ依頼しており、データを用いた迅速な経営判断が難しい状況でした」と、当時の様子を振り返る。

インターネット販売を手がける企業にとって、自社の顧客や販売データから時代の変化をつかむことは、売上の向上を目指す上で必須となる。そこでi879では、同年にウイングアーク1stのBI・情報活用ツール「Dr.Sum」を導入。2010年には社内のシステム刷新を機に「Dr.Sum EA」へとアップグレードし、より本格的な情報活用を実践してきた。

PDCAサイクルのスピードアップを実現

株式会社i879 B2C事業部 マネージャー 大橋俊彦氏

i879 B2C事業部 マネージャーの大橋俊彦氏は「お客さまのニーズに応じて、商品やコンテンツを見直すサイクルが圧倒的に短くなりました」と、情報活用の効果を語る。

花業界ではこれまで、年間で一番大きな「母の日」をはじめとしたイベントベースでのマーチャンダイジングが一般的だった。i879も例外ではなく、BIツール導入後もしばらくは経営判断のための分析をメインに使用していたそうだ。

しかし数年前から、各担当者レベルでより詳細なデータが取得できるよう社内体制の改革を実施。これにより、従来は行っていなかった週次・月次での分析が可能となり、対策を含めたPDCAサイクルのスピードアップを実現したのである。

「これまではDr.Sum EAというツールこそ導入していたのですが、それを使いこなす”気付き”が欠けている状態でした。市場の変化スピードが速い現代のビジネスでは、より詳細かつ頻度の高い分析を行うことが重要になってきます」と、大橋氏は語る。こうした施策の結果、登録数・コンバージョンの向上を実現したそうだ。

i879ではさらなる情報活用を進めるべく、2013年にBIダッシュボード「MotionBoard」を導入した。一番の目的は、各社員が情報に触れられる機会を増やすこと。

星野氏は「弊社ではもともと、自社サイトやYahoo!ショッピングなどチャネルごとの受注数を自社システムで社員全員が把握できるようにしていましたが、一方で受注数の増加・減少に関する詳細原因までは社員単位で追及することが難しい(非常に手間がかかる)状況でした。そこでダッシュボードを活用することにより、簡単かつ細かい状況把握が可能になったわけです」と、導入の経緯を語る。 さらに、「"今日はどれだけ売れているのか、どれだけ目標数に足りていないのか"という意識を社員全員が持つだけで、企業活動としては大きなメリットがあります」と語る大橋氏。実際、売上状況を把握する習慣がつけば各個人の危機意識が高まるのはもちろん、業務に取り組むモチベーションもアップする。その結果、創意工夫や新しいアイデアが生まれるなど、社員同士の意見交換も活発化するというわけだ。

"個に迫りたい"という要求を満たすデータ活用

そのほか、同社ではBIツール・ダッシュボードとは別に「Google Analytics」も導入し、2011年から積極的に活用している。

「Dr.Sum EAやMotionBoardを使えば、弊社の顧客や販売データを基に正確かつ詳細な分析が可能になります。しかし、インターネット販売の場合はどうしてもこれらとは別にリアルタイム性が求められるため、直近の傾向をGoogle Analyticsで分析しています」と大橋氏。

ただし、リアルタイム性を追求しすぎるとかえって正しい判断が難しくなるケースもある。そこで、BIによる分析結果を踏まえて、中長期的かつしっかりとした顧客起点で、軸がぶれない分析を心がけているそうだ。

インターネット環境が普及し、誰でも簡単にECサイトが開設できるなど、インターネット販売を取り巻く市場環境は非常に厳しくなっている。そんな中、i879がコンバージョン率を落とすことなく事業を展開できているのは、こうしたデータ活用があればこそといえるだろう。

「Web上ではユーザーの行動履歴やトラフィックなどさまざまな情報が得られますが、なにより重要なのが『顧客起点でデータを見る』ことです。特に弊社のようなインターネット販売を専門とした企業の場合、お客さまと直接お会いする機会がないため、実際にお客さまがどのような方なのか、”個に迫りたい”という要求が大きくなります。こうした詳細な分析がBIツールやダッシュボードで行えるようになったのは、弊社として非常に大きな変化ですね。これは、贈る方の気持ちを一緒に伝えるという上でも必要不可欠です」と語る大橋氏。

自分向けの商品を買うのではなく、贈る相手がいるフラワーギフトの場合、顧客の気持ちを知ることは特に重要なポイントだ。リアル店舗を持たないi879は、こうした顧客の気持ちをより深く知る術として、積極的にデータ活用へ取り組んでいるのである。

10月30日のセッションでは星野氏と大橋氏が、これまで同社が行ってきたデータ活用に関する取り組みや現状の詳細、今後の展開などについて紹介する予定だ。インターネット販売を行っている企業は、ぜひ参考にしていただきたい。

※フォーラムへの参加は事前登録制(先着順)のため、本セッションもすぐに満席となる可能性がある。最新状況について詳しくは、フォーラムの公式Webサイトを確認してもらいたい。