銀河の衝突は宇宙で頻繁に起きる出来事である。銀河同士が衝突した後に高い確率で、巨大なガス円盤が誕生することを、日本学術振興会の植田準子特別研究員らの国際研究グループが電波望遠鏡の多数の観測結果から確かめた。われわれの太陽系がある天の川銀河のような円盤銀河の起源に迫る重要な成果として注目される。8月発行の米天文学誌アストロフィジカル・ジャーナル・サプリメントに発表した。
写真. 電波望遠鏡で観測した衝突銀河それぞれのガスの分布。等高線は一酸化炭素ガスが放つ電波の強度を表す。赤色は遠ざかる方向に、青色は近づく方向にガスが動いていることを示す。赤から青へのきれいなグラデーションが見えていれば、ガスが円盤状に銀河中心のまわりを回っていることがわかる。(提供:国立天文台) |
地球から4000万~6億光年離れた37個の衝突銀河の分子ガス分布を、チリのアタカマ砂漠の高地にあるアルマ望遠鏡をはじめとする世界中の電波望遠鏡の観測データを集めて分析した。このうち、30個の衝突銀河で分子ガスが放つ電波を検出でき、24個の衝突銀河では、分子ガスが円盤状に回転していることを突き止めた。しかも、その半分には、銀河中心部の星の集合体よりも大きく広がったガス円盤があり、今後も星がいっぱいつくられていく可能性がうかがえた。
巨大なガス円盤の有無は、電波望遠鏡で観測した衝突銀河の一酸化炭素ガスが放つ電波の強度から判定した。衝突銀河のガスが近づいているか、遠ざかっているか、の動きのグラデーションが電波観測で一方向にきれいに見えている場合は、ガスが円盤状に銀河中心の周りを回っていると捉えた。
銀河同士が衝突すると、巨大ガス円盤ができて星々が新たに形成される現場になることは、理論的に予言されていた。また、個別の衝突銀河の電波観測でも報告されたことはあるが、これほど多くの衝突銀河の観測から、ガス円盤誕生が実証されたのは初めてで、宇宙での銀河の生々流転の基本シナリオとなりそうだ。
植田準子さんは「今回の研究では、国立天文台も参加して2011年から観測を始めたアルマ望遠鏡のデータが半分以上を占める。世界最高感度の電波望遠鏡のアルマが登場して実現した研究だ。37個を調べて少なくとも24個にガス円盤があった事実は、銀河同士の衝突でガス円盤ができる現象がありふれていることの証拠になる」と話している。