実はさまざまな次世代ロボットの開発を進めているパナソニック
パナソニック系列のパワードスーツ開発ベンチャーであるアクティブリンクは9月11日、物流現場における作業者の腰を主とした身体負担の軽減を目的としたアシストスーツのプロトタイプ「AWN(あうん)-02」(画像1)のプレス向け技術セミナーを実施した。実機によるデモや、装着体験も実施されたので、その模様をお届けする。
まずAWN-02の紹介に入る前に、アクティブリンクの紹介をしよう。同社は、パナソニックの出資によってスタートし、現在は三井物産の増資も受け、資本金2億2400万円(パナソニック79.6%、三井物産19.6%)という規模の企業だ。京都で2003年に創業した後、現在は奈良の日本家屋的な非常に特徴的な「ならやま研究パーク」(画像2)内の社屋で、藤本弘道代表取締役社長(画像3)以下、11人の技術者によって研究開発が続けられている少数精鋭の集団である。
ちなみにロボット好きの人なら、同社のことは、SFアクション・ホラー映画の「エイリアン2」に登場したパワーローダーを実現したような、100kgの重量物を持ち上げられるパワードスーツ「パワーローダー MS-02」(画像4)などでご存じのことだろう。
同社は、日本の少子高齢化が先進国の中でダントツの勢いで進んでいる状況に対し(画像5)、それを乗り切っていくためには「パワーバリアレス社会の実現」が重要であると唱える。高齢者や女性といった腕力や体力など「力」に劣る人たちが、体力仕事にも従事できる環境を整備できるパワード/アシストスーツの実現こそが重要だというわけだ(画像6)。
この物流業に対するパワード/アシストスーツの投入というのは、非常に有効だと誰もが思うだろう。中腰の姿勢で荷物を右から左に送ったり、しゃがんで抱えて立ち上がってといったことを繰り返す。ヒザを曲げずに床にある荷物を抱え上げようとすると腰を痛める確率が高いし、実際に倉庫業務などに従事している方は、「もっと腰が楽にならないものか」と思ったことは数え切れないのではないだろうか。
しかし残念なことに、日本が国としてサービスロボットの開発の中でも力を入れて支援している分野は、「介護・福祉」である。その次が農業で、実は物流はあまり顧みられていない。厚生労働省による介護・福祉用のロボット開発の支援プロジェクトなどが行われているわけだが、同社はあえて支援を受けられる可能性の高い分野ではなく、まったく受けられない分野である物流から挑んでおり、その点はアクティブリンクの大きな特徴の1つといえるだろう。
ちなみに同社が物流用のパワード/アシストスーツだけを開発しているかというとそうではなく、実際のところは農業や福祉に加え、工場、建設、土木、原子力プラント、救急・レスキュー、防衛、医療などなど、あらゆる分野のパワードスーツも研究している。ただし、パナソニック本体や同じく関連子会社が、離床アシストベッド「リショーネ」(画像7)や医療用全自動搬送ロボット「Hospi」(画像8)など、福祉系や医療系やなどに力を入れているので、現在は物流関係に力を注いでいるという具合だそうだ。
画像7(左):リショーネ。全身麻痺患者の使用を目的とした、ベッドの一部が分離してそのまま電動リクライニング機能付きの車いすになるロボット技術が応用された離床アシストベッド。画像8(右):大規模な病院での利用を目的とした、薬剤や検体などの搬送を全自動で行えるロボットHospi |
なお、これまで開発してきた主立ったパワード/アシストスーツのプロトタイプの一覧は画像9の通り。ちなみに同社では、パワードスーツ・アシストスーツの線引きとして、アシスト力が30kgf以下かそれ以上かというところにあるとし、30kgf以下がアシストスーツ/パワーローダーライト(同社の製品として、「PLL-01一徹」や「PLN-01忍者」など)の範疇で、30~100kgfぐらいがパワーローダー(MS-02)としている。そして、同社が考えるパワード/アシストスーツでの事業展開のラインアップが、画像10のような形だ。