東海大学は9月3日、イルカがヒトの言葉をまねられることを世界で初めて実証したと発表した。
この研究成果は同大学海洋学部生物学科の村山司 教授らの研究チームによるもので、このほど国際比較心理学雑誌「INTERNATIONAL JOURNAL OF COMPARATIVE PSYCHOLOGY」に掲載された。
同教授は飼育されているイルカ類を対象に、感覚・知能・行動の実験的解析を実施しており、今回、千葉県の鴨川シーワールドで飼育されている「ナック」において、イルカがヒトの言葉をまねることが実証されたという。
イルカは、頭の上にある小さな呼吸孔(鼻)から鳴き声を出し、仲間同士のコミュニケーションなどに利用することが知られている。今回の研究では、水中で飼育員がマイクを使い声をかけたときに、ナックが呼吸孔から出す音の音波や周波数を測定した。分析の結果、飼育員の発音パターンとほぼ一致していることを突き止め、ナックがヒトの言葉をまねていると結論付けられた。
同教授らはさらに、ナックに対して2003年から言葉の訓練も実施。これまでにフィン(足ひれ)を見せると短い高音、バケツは低音、ゴーグルは長い高音、長ぐつは問いかけるような音など、見せた物に応じて異なる鳴き声を出させることに成功している。また、ナックに記号を見せて「AならばB」「BならばC」と覚えさせ、「A」を示しただけで「C」を選ぶ三段論法的な思考ができることも確認したという。
イルカの認知機能の研究は世界でもまだ例が少なく、日本国内で同分野を専門に研究しているのは村山教授だけ。ナックが話す言葉は現在、「おはよう」「ピヨピヨ」など8つの言葉で、まだ「オウム返し」段階だが、村山教授は「物に応じた鳴き声を発することができるので、言葉の意味を理解して発音することもできるはず。ゆくゆくは"何がしたい?"と聞いたら"エサを食べる"とか"遊びたい"と会話ができれば」と期待を寄せている。