ルネサス エレクトロニクスは9月2日、産業用Ethernet通信機能を搭載した製造装置や監視カメラ、ロボットなどの産業機器の開発支援をグローバルで行っていくことを目的としたコンソーシアム「R-INコンソーシアム」の設立を決定し、2015年度より本格的な活動を開始すると発表した。
R-INシリーズは産業分野をターゲットとした製品群で、2012年に第1弾となる産業用イーサネット通信LSI「R-IN32M3シリーズ」が発表された。同シリーズは2013年より本格提供が開始され、現在、7カ国で採用が決定しているほか、全世界で50社以上で評価が進められており、2014年度下期より、各社で搭載機器の量産が開始される予定だという。
同社が産業分野としているのは、「FA(Factory Automation)/PA(Process Automation)」、「Energy(Smart Grid)」、「Humanoid Robot」、「Traffic/Station」、「Surveillance Camera & Building Automation」の5つ。第1弾製品であるM3シリーズがターゲットとしているFA/PA分野は自動化が進んでいるが、さらなる生産効率の向上が求められている。その鍵となるのが、各製造装置の生産能力のバラつきの抑制であり、その実現のためには製造現場のデータをビッグデータ(製造ビッグデータ)として解析し、現場にフィードバックする必要があるという。M3シリーズはそうしたソリューションの実現を目指して開発されたもので、各装置にインテリジェント性を持たせ、連携させることで、そうした問題の解決に貢献することができるという。
R-INが狙う産業分野の概要。こうした分野に半導体デバイスだけでなく、ソフトや開発ボードなどを含めたプラットフォームを提供することで存在感を増そうというのが今回のコンソーシアムの目標の1つとなっている |
こうした各種のデータの活用も含め、センサによる製造環境の情報が大量に発生するため、ネットワークの高速化も必要となってきており、産業用Ethernet向けプロトコルも1Gbpsに対応したものなどが登場している。また、そうしたセンサなどの増加に反し、機器の低消費電力化の要求も厳しく、単に産業用PCを搭載して対応、というわけにはいかなくなっているという背景があり、M3ではPHYやMACに加え、一部の産業用通信プロトコルもハードIP化したり、リアルタイムOS(RTOS)の命令セットもハードIP化することで、従来、そこの処理に割かれていたCPUの負荷を低減させることを可能としており、その余ったパフォーマンスを機器制御やセーフティなどの用途に振り分けることを可能にしている。
プロセッサとしてはARM Cortex-M3コア(動作周波数100MHz)を採用しているが、前述の通り、RTOS(μITRON version4.0相当)の命令セットがハード化されてCPUにほとんど負荷をかけないため、RTOSにおける各種のシステムコールは常時約2μs程度の処理を実現しつつ、標準Ethernet(UDP/IP)での通信の場合、250Mbps程度まで処理ができるため、例えば100Mbpsで通信した場合、CPU負荷は20-30%程度に抑えることができる。また、マイコンのようにセンサI/Oやネットワークに対するチャネル数の制限、といったものはなく、CPUのパフォーマンスが許す限り増やすことができるので、用途に応じてセンサノードを数十個増やしたり、といったことも可能だという。
また、R-INシリーズはソリューションとしての提供が推し進められているため、すでにIARシステムズとプロトコルスタック評価・開発プラットフォームの提供を行っているほか、2014年9月末よりリモートIOモジュールのほか、ドキュメント、ソフトウェア、回路図情報など、開発に必要な一式を無償で貸し出す「リモートIOトライアルキット」と呼ぶプラットフォームの提供も開始される予定だ。
プラットフォームとして展開するうえで要となる開発ソリューションとしては現在、IARと連携したものが提供されているほか、9月末からはリモートIO開発の期間短縮を図ることができるトライアルキットを無償で貸し出す取り組みも開始させるという |
コンソーシアムそのものは、すでに複数の国内企業が参加を表明しているが、今後は欧米企業へも参加を促し、2015年度で100社の参加を目指すとしている。また、これを梃に、R-INシリーズとして2019年度で80億円規模の売り上げを目指していくと同社では説明している。