大阪市立大学は8月21日、薬剤耐性を持つことで知られる「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染皮膚潰瘍」を、世界で初めて天然アミノ酸(ALA)の全身投与とLED光を用いた光線力学療法(PDT)で治療することに成功したと発表した。
同成果は同大学大学院医学研究科の鶴田大輔 教授、同 小澤俊幸 講師らの研究グループとSBI ホールディングスの子会社で、健康食品および化粧品の研究・開発などを行っているSBIファーマ、コスモ石油の子会社でALA原体の製造およびALA配合肥料の製造・販売を行っているコスモ ALAとの共同研究によるもの。詳細は米オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
近年、薬に対する耐性を持つ菌が世界的に出現・蔓延し、MRSAはその代表的な菌のひとつ。これが感染した皮膚潰瘍は、感染していない場合と比較し治癒が悪く、傷が広範囲にわたる場合には傷が治らず死亡する場合もあるという。
さらに、これまで治療に対して有効であった抗生物質「バンコマイシン」の耐性を獲得したものも出現し、新種の耐性菌の出現は現代医療において大きな問題となっており、新種の耐性菌を発生させないために、抗菌薬に頼らない新たな抗菌治療法の開発が必要とされている。
今回の研究で用いられたPDTとは、光感受性物質として、光増感剤の前駆物質であるALAを全身に投与し、標的となる組織に集積させた後に、特定の波長の光を照射することで生じる活性酵素によって細菌を死滅させる治療法。実験では背中にMRSA感染皮膚潰瘍を作成したマウスでこの治療法を実施したところ、MRSAは滅菌し、傷の治癒が促進され感染していない潰瘍と同等の治癒効果を得ることができたという。
この結果について同研究グループは、「耐性菌を作らないこの治療法は、耐性菌治療に難渋する現代医療において、新たな細菌感染の治療法として期待される」とコメントしている。