京都大学は、水滴を弾きながら水蒸気や有機分子を取り込むことが可能な多孔性構造体を開発したと発表した。
同成果は、同大 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の北川進拠点長(教授)、樋口雅一特定助教らによるもの。詳細は、独オンライン科学誌「Angewandte Chemie」に掲載された。
材料表面が水滴を弾く性質である超撥水性は、ガラス表面や外壁などにその機能をもつ素材をコーティングすることによって、清掃が不必要になるなど、生活する上で役立つ機能として広く知られている。そして、この超撥水性は、トリフルオロメチル基または長鎖アルキル基など、特定の有機分子を使用することや、材料表面の微細な加工による凹凸によって達成することができる。しかし、これまでの方法では、超撥水性材料が気体や有機分子などを吸着する設計指針はなかった。
今回の研究では、有機物と無機物からなる多孔性金属錯体(PCPまたはMOF)というナノ細孔をもつ結晶性の多孔性材料を用いた。従来のPCPは、水滴をはじくどころか、水と接触すると構造崩壊が起こってしまっていた。また、PCPの原料の有機物にフッ素原子や長鎖アルキル基を使用すると超撥水性をもち、吸着能のあるPCPを合成することは可能だったが、穴が少なくなってしまうという問題があった。そこで、研究グループは、フッ素原子も長鎖アルキル基も使わず、PCPの粒子表面にあるベンゼン環の配列を精密に制御することによって、超撥水性を示すPCPの開発に成功した。さらに、細孔構造を構築した細孔性骨格(PCP)にすることにより、気体や有機分子を取り込む材料の開発にも成功した。研究グループでは、この新たな合成手法により、水中で気体を自在に扱う技術への応用などが期待できるとコメントしている。