日本マイクロソフトは6月16日、都内のホテルで「Microsoft IoT Summit 2014」を開催。同社のIoT(Internet of Things)戦略を紹介した。

マイクロソフトディベロップメント 代表取締役社長 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐 俊一氏

マイクロソフトディベロップメント 代表取締役社長 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐 俊一氏は、「IoTは膨大で、定義がしにくく、わかりにくい。そのため、ユーザーはどこから手を着けていいのかわらない状況になっている。ただ、新しい技術が出てくるときは、こういったことが起きがちだ。肝心なのは、データとIoTを結びつけて、どうやって新しい価値を見い出していくかだ」と語った。

そして同氏はマイクロソフトでは、「IoT=Internet of Your Things(既存のIT資産)」と位置づけていると紹介。

マイクロソフトは、「IoT=Internet of Your Things(既存のIT資産)」と定義

「まず、既存デバイスをクラウドにつなげていくことから始め、データを統合し、データから新しい洞察を生んでいくことが重要だ。こういったループを繰り返すステップを踏んでいけばいい」と説明した。

IoTを成功させるためのループ

IoTにおいて、なぜマイクロソフトを利用すべきなのかについて同氏は、Windowsのデバイスやクラウドサービスがたくさんあり、エコシステムによって価値を提供できる点を挙げ、「Windowsのデバイスはたくさんあり、組み込み機器にも入っており、これらはつながることを前提につくられている。クラウドもAzure上にいろいろなサービスがある。集積回路、センサー、AndroidやiOSなどマルチプラットフォームで開発できる環境も整っている。こういったものをつなげていけば、新しい価値を生み出すことができる」と語った。

マイクロソフトが提供するデバイスやサービス

ただ、これらを接続するための課題もあり、この課題を解決するために同社はAzure上で動作する「Microsoft Azure Intelligent Systems Service」を今後提供していく。

「Microsoft Azure Intelligent Systems Service」は、今年の4月に発表され、すでに一部ユーザーにパブリックプレビュー版を提供している。そして、近々、一般にもプレビュー版を公開する予定だ。

「Microsoft Azure Intelligent Systems Service」

「Microsoft Azure Intelligent Systems Service」は、IoTを利用するための基礎基盤として、接続、構成、活用、管理機能を提供し、これらを活用しパートナーが自社サービスを組み合わせ、業種別ソリューションとして提供する。

ロンドンの地下鉄では、すでに「Microsoft Azure Intelligent Systems Service」を使った管理を開始しているという。

ロンドンの地下鉄管理システム「London Underground Manager」


国内のIoTの事例としては、SBクリエイティブ、コムツァイト、オムロンの3社を紹介。

「インテリジェント・ブックシェルフ」

SBクリエイティブでは、書店向けの「インテリジェント・ブックシェルフ」サービス展開する。「インテリジェント・ブックシェルフ」は、小売店向けデジタルサイネージで、棚の中に4.3型のサイネージ用の小型ディスプレイが複数組み込まれ、陳列している紙書籍の詳細情報、シリーズやバックナンバーなどの関連情報、新刊予告やその書店情報など、さまざまな情報を発信している。この本棚は近距離無線端末(Bluetooth)を搭載し、機器間通信を実現することにより、電子書籍の立ち読みファイルをスマートフォンなどの端末へ転送したり、新刊予告を確認したりすることができる。 配信する情報はAzure上で管理・運用しているという。

今後は、紀伊國屋書店で試験運用していくという。

コムツァイトでは、 ドアの開閉センサー、人感センサーを利用した見守りサービスを展開する。センサーはソーラーセルにより自給自足して動作し、ワイヤレスでデータを送信する。

コムツァイトの見守りシステム

送られたデータから得た情報は、WebGLを利用した3D表示が行われる。血圧計などとも連携可能で、今後は、トイレ回数、血圧、体温、体組成などのデータを利用し、ヘルスケアも行っていくという。

オムロンでは、FA(Factory Automation)用の新たなマシンインタフェースとして、「Sysmac NAシリーズ」を紹介。これまで、FA用のインタフェースは各メーカーオリジナルで、PDFが表示できない、動画が再生できないといった課題があったという。そこで、オムロンでは、新たにWindows Embeddedを採用することで、この課題を解決した。

「Sysmac NAシリーズ」

Windows Embeddedを採用することで、マニアルのPDF表示が可能になったほか、トラブル時の対応を動画で表示させることができるようになった。また、遠隔での状態表示も可能になり、事務所での状況把握を可能にした。

また、VisualBasicでスクリプトを組み込ことが可能になったため、メーカーの独自仕様を勉強することなく、プログラムを記述することが可能で、自由度をあげている。

なお、「Sysmac NAシリーズ」は近々発売されるという。