ガンマ線バーストは突発的にガンマ線を出した後に数日間、残光を放つ。その残光からの円偏光を東北大学大学院理学研究科の當真賢二(とうま けんじ)助教と英レスター大学のウィアセーマ博士、イタリア国立宇宙物理学研究所のコビーノ教授らの国際研究チームが初めて発見した。チリの高地にある欧州南天天文台の超大型望遠鏡VLTで観測したもので、「円偏光はあるにしても、ごく少ない」とする現在の理論に修正を迫る成果といえる。5月8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

図. ガンマ線バーストの概念図

ガンマ線バーストは宇宙最大の爆発現象で、ブラックホール形成の現場と考えられ、現代物理学で最も注目される研究対象のひとつである。ガンマ線で数秒間、突然輝いた後、可視光や電波、X線で数日間、残光が観測される。爆風による猛烈な衝撃波が残光を発生する。その観測は高エネルギープラズマ物理学などの研究に貴重な情報をもたらしてくれる。

研究チームは今回、2012年10月24日に地球から100億光年離れたところに出現したガンマ線バーストをVLT望遠鏡で詳しく観測して、残光に約5%の直線偏光と0.6%の円偏光を検出した。これまで直線偏光は多くのガンマ線バーストで検出されてきたが、円偏光は初めての発見だった。

偏光は、光の波の振動が一定の方向に偏っている現象を指す。直線的に光波の振動の仕方が偏る直線偏光は、大爆発が球状でなくてジェット状なら起きる。しかし、同時にミクロなスケールでも衝撃波が対称でなければ、回転的に光の振動が偏る円偏光も生まれるとみられている。研究チームは今回の結果を基に、電子の加速の仕方が等方でなく、でこぼこであるために円偏光が発生するという仮説を提唱した。衝撃波が円偏光をもたらす原因の詳細な解明が次の課題になってきた。

研究チームの當真賢二さんは「これまでのガンマ線バーストの衝撃波理論では、円偏光の発生は考慮していなかった。今回のわれわれの発見で、理論を再構築する必要が出てきた。天文学だけでなく、プラズマ物理にとって重要な意味がある。高エネルギーのプラズマのミクロな挙動を研究する手がかりになるだろう。ミクロスケールのプラズマ物理の最前線を切り開く発見だ」と話している。

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