――昨年、東京画廊にて個展を開催され話題となりましたが、「○○ダスト」シリーズの販売状況はどうでしたか。
広島でこのシリーズによる個展を行ったことはありましたが、都内のギャラリーでははじめてでした。10点ほど出品して、半分くらい買い手がつきました。やはり東京のほうが、作品に対する反応は大きく、これまでの状況と比較するとかなり売れたと思います。
――今後、作品制作でやっていけそうだ、という手応えはありましたか?
いえ、現状では難しいと思います。広島ではなく東京など関東圏で活動すれば、展覧会に呼ばれる機会が増えるなど、また違った展開があるのかもしれないと考えたりもしますが。
――「○○ダスト」シリーズのほかにも、牛乳石けんを牛の形に彫った「牛ソープ」や、長靴の底に精密な恐竜を彫った作品など、身近な日用品の中から新たな価値やすがたを見いだしているように感じます。こうした作品群や「○○ダスト」シリーズに通底している思いをお話しいただけますでしょうか。
「牛ソープ」に関して、牛乳石けんの原料には牛脂のほかにも、やし油など他の成分が入っていますが、石けんの全体のうち何%かは「牛」でできているんだなという漠然とした意識から、牛乳石けんを素材に牛を彫りました。また、靴底を恐竜の形に彫刻したものも、化石燃料の中にも太古の昔に絶滅した「恐竜」が成分として入っているのではないのか、という思いから作りました。
これらの作品に関して、仏教の言葉でいえば「輪廻転生」みたいなことを表したいという考えがあります。一度はなくなった物が、数年後か、あるいは何万年後かに別の物になって、変身して出てくる可能性を見せられればと思っています。
そして「○○ダスト」シリーズは、絵を消して立体に再生するという行為が、こうした過去の作品と似ているのではないかと。輪廻転生という言葉は、私が創作を行っていく中で、今のところ一番しっくりくる言葉だと思っています。
――確かに、入江さんの作品は、普段目にしている物からは見えない部分を掘り起こしていらっしゃるように思います。ちなみに、今後の作品制作の予定は?
まだプランを作成している段階なのですが、出展の決定している六甲ミーツ・アート芸術散歩2014にむけて、構想を練っています。この芸術祭には、かつて「牛ソープ」を公募作家として展示したのですが、今回は招待作家としてお声がけいただいています。「○○ダスト」シリーズでいこうとは思っていますが、詳細はまだ決めかねているところですね。
――今後、「○○ダスト」シリーズを中心に制作に取り組まれるのでしょうか?
「○○ダスト」シリーズに限らず、さまざまな物を作っていきたいのですが、メディアにこのシリーズがよく出ているため、依頼されることが多いんです。テーマや意図に合わせてこちらから提案することもありますが、やはり指名される機会が増えています。
――最後に、「○○ダスト」シリーズでこのモチーフを作ってみたいというものがあれば教えてください。
これも構想段階ではあるのですが、観音像を作っているところから発展して、曼荼羅を消してたくさんの像を作り上げたいというアイデアがあります。ただし、仏教的なものにだけ特別な思い入れがあるというのではなく、今までの作品を拡張するようなかたちで展開していければと思っています。
■入江氏の出展予定イベント
9月13日~11月24日
「六甲ミーツアート2014」
(会場:兵庫県・神戸市 「自然体感展望台 六甲枝垂れ」など六甲山エリア一帯)