京都大学(京大)は、デジタル絵本を活用することで、幼児に対する独自の教育効果の可能性が示唆される結果を発見したと発表した。

成果は、京大 霊長類研究所の正高信男 教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、欧州科学誌「Frontiers in Psychology」誌にオンライン掲載される予定だ。

現在、欧米でデジタル書籍の子どもへの影響についての議論が沸騰している。米国では3500人を対象とした大規模調査も行われ、子どもの電子書籍愛好者は2012年には16%だったが、わずか1年後の2013年には23%にまで増加したという。専門家や研究者は、この変化について否定的な意見が大勢を占めているとされるが、その一方で、実証的な研究が実は皆無だった。また、いったん動き出した時代の流れを止めることは困難であるだろうと正高教授らは述べている。

今回の研究で行われた実験内容は、4歳児15名を被験者として、iPadにダウンロードされたデジタル絵本「たなばたバス」(藤本ともひこ著)を母子で6日間にわたって毎日2回、合計12回の「読み聞かせ」を体験させたるというものだ(画像1・2)。

そして実験の結果、子どもが読むことができるひらがなの文字数は体験以前にくらべて、平均して3文字増加することが確認された。一方、従来の印刷された絵本による読み聞かせを行った別の15名では、そうした学習効果は現れなかったという。デジタル絵本による、独自の教育効果の可能性が示唆される結果が明らかになったというわけだ。

画像1(左):「たなばたバス」。画像2(右):「たなばたバス」の読み聞かせの様子

ただし、「たなばたバス」はただ単に、印刷物をデジタル化したものではない。ストーリーをプロのナレーターが読み上げる「ナレーション機能」があり、なおかつ読み上げられる文字がその都度、画面上で赤く彩りされる「ハイライト機能」も搭載されている。デジタル絵本ならではの機能により、より聞き取りやすく、さらに音声と文字のマッチングを行いやすいというわけだ。

「たなばたバス」のこうした機能と、今回の研究成果に対して正高教授らは、子どもの発達にとって、より有益なデジタル書籍の開発を行う上で貴重な知見を提供する成果ではないかと推測されるとした。正高教授らは今後、デジタル絵本での読みの学習は、はたして「書く」ことの習得にも影響を及ぼすのか、検討を行っていく予定としている。