東日本大震災では、地震発生後に電話回線が集中し、数時間にわたって家族や会社と連絡が取れなくなったという事態は記憶に新しい。災害発生時にはまず大切な人たちの安否が心配になるが、通信事業社による通話制限が行われたり回線が集中したりすると、一向に連絡が取れず、不安が増すばかりか次に起こすべき行動にも支障をきたしかねない。こうした深刻な問題を解決すべく、ソフトウェア開発を手がけるゼネテックが開発したのが、緊急災害時における位置情報自動通知システム「ココダヨ」だ。

災害情報と連動した位置情報自動通知サービス

ココダヨは、気象庁や公的機関が全国瞬時警報システム(Jアラート)から発報する緊急速報に連動して、災害情報が流れると登録されている家族や関係者の位置・安否情報を瞬時にスマートフォンや携帯電話に自動的に通知する。緊急警報をキャッチし、自動的に位置情報を配信する仕組みは国内特許を取得しており、現在国際特許も出願している。

ココダヨの仕組みは非常にシンプルだ。まず事前に安否を確認したい家族や友人、関係者をそれぞれの承認のうえで登録。すると端末のGPS機能を利用して、定期的に登録ユーザーの現在位置を取得する。緊急警報が発令されると、事前に登録されたグループの直近の位置情報(住所)が自動通知されるのである。

「ココダヨ」サービスイメージ

ゼネテックの代表取締役社長 上野憲二氏

ゼネテックの代表取締役社長、上野憲二氏は語る。「ココダヨは、災害発生時に即座に位置情報を伝えることで、その後の的確な行動を支援するために開発しました。携帯電話向け組み込み基盤やソフトウェアを手がけてきた当社のノウハウが生かされています」

従来の安否確認システムは、災害発生後に利用者が自ら安否情報を入力する仕組みのものがほとんどであるため、本人が被災したり通信制限がかかったりした場合には迅速な安否確認が難しかった。しかしココダヨであれば、通信制限がかかる前に位置情報を自動的に知らせることができる。その後に、安否確認の画面が表示され、安否情報を関係者に伝える仕組みを持つ。

ココダヨは、企業や自治体、教育現場のBCP対策強化においても活用が期待される。災害時に事業を継続するには、何より経営層などトップによる迅速かつ的確な判断が求められる。そこでそうしたキーパーソンを登録しておくことで、災害発生後に位置・安否情報の連携が行えることから、その後の有効な対策が打ちやすくなるのである。自治体や教育現場など、災害事にサポートが必要となるお年寄りや子どもたちを抱える団体においても、効果的なサービスとなるであろう。

Web会議サービスと組み合わせ、さらなるBCP対策の強化に

安否確認後の活動を支援するサービスには、ゼネテックのWeb会議システム「GCgate」がある。GCgateの特徴として、100~200Kbps程度の低帯域の通信環境でもストレスなく利用が可能なこと、そして専用ソフトウェアのインストールが不要なことが挙げられる。また、iOS、Android双方に対応しており、無料アプリをインストールすればスマートデバイスでの使用も可能だ。そのため、災害時の通信制限下であっても場所やデバイスを問わずに円滑なコミュニケーションが期待できるのである。

もちろん、平常時にはビジネスを支援するコミュニケーション・ツールとしても力を発揮する。わかりやすい直感的な操作性で、顧客との打ち合わせにも活用しやすい。また回線事情が不安定な海外拠点との会議でも、スムーズな映像・音声のやり取りを実現する。

GCgateは、遠隔会議で肝となる資料の共有機能も充実しており、利用シーンに応じて大きく3つの仕組みが用意されている。まず1つ目は、OfficeファイルやPDFファイル、動画ファイル、画像ファイルを組み合わせてスライド化し、会議参加者と共有する機能だ。事前にサーバーに資料をアップロードし、会議参加者は資料を端末にダウンロード、暗号化して保存する。その後、お互いにデータが表示された画面上に自由に書き込んでいくことができる。

2つ目がホワイトボード機能だ。こちらはフリースペース上に資料を貼り付けて共有(ファイル添付機能)したり、1つ目の機能と同様に参加者が同時に書き込んで共有したりすることが可能となっている。

そして3つ目がデスクトップ共有である。これは会議の主催者が、共有する画面の範囲をデスクトップ上で選択すると、範囲指定された部分の映像を参加者の画面に表示させるものだ。新しい業務システムを導入した際に使用方法のレクチャーを行うなど、さまざまな活用の仕方があるだろう。

平常時と災害時、どちらにも役立つトータルなサービス展開

ゼネテックでは、ココダヨやGCgateなどのサービスを連携し、平常時にも災害時にも、役立つ統合的なサービスを展開していくビジョンを描いている。また、公共機関や地図サービス、SNSなどの事業者との連携も強化、国内だけではなく、地震国や災害多発地域向けなどグローバルなサービス展開も予定している。災害時の安心・安全の質を向上させるために、より一層の情報のシームレス化を目指している。

「例えば、渋滞情報を合わせて提供することで、最適なルートで救助に向かえるようになりますし、人の集中度合いの情報を利用できれば帰宅困難者の解消にもつながることでしょう。現在、ココダヨやGCgateを組み合わせて、緊急時の避難誘導をトータルでサポートできるサービスを開発中です。私たちの提供するサービスが、1人でも多くの方の安心・安全に役立てるよう、これからも積極的な活動を展開していきます」と、上野氏は力強く宣言した。

「ココダヨ」と災害対策との連携より