KDDIは4月23日、「陸上自衛隊東部方面隊とKDDI株式会社との間の災害時における通信確保のための相互協力に関する協定」を締結したと発表した。

この災害協定は、2013年11月1日に防衛省とKDDIの間で締結した「災害協定(中央協定)」に基づくもので、東部方面隊が管轄する関東地方と新潟県と山梨県、長野県、静岡県におけるKDDIと自衛隊の相互協力を目的としている。

KDDIは3月10日に中部方面隊と災害協定を結んでおり、東部方面隊との協定締結をもって全地方方面隊との協定締結が完了した。なお、東部方面隊はNTTドコモと2012年6月に災害協定を締結しており、その他インフラ事業者についても、NEXCOと2012年6月に、東京電力や中部電力と2013年10月に災害協定を締結している。

KDDI コーポレート統括本部 総務・人事本部長 執行役員 村本 伸一氏(左)と、陸上自衛隊東部方面隊 防衛部長 1等陸佐 坂本 知司氏(右)

陸上自衛隊 朝霞駐屯地で行なわれた災害協定の締結式には、KDDI コーポレート統括本部で総務・人事本部長 執行役員を務める村本 伸一氏と、陸上自衛隊東部方面隊 防衛部長 1等陸佐の坂本 知司氏が参加。調印後、両者の担当者が締結内容について質疑応答に応じた。

初めにKDDI 村本氏は、今回の協定締結について「一刻一秒を争う災害の際には、どれだけ早く通信を復旧するかが自衛隊にとっても重要と感じていた。自衛隊側も大きな期待を持っている感触だ。2011年3月11日の東日本大震災では、KDDIとして初動対応は早くできたと感じているが、その一方で、インフラが寸断されてしまった地域への車載基地局の投入について、どこに車載基地局を配備すれば良いか分からなかった。今後は協定によって、被災地の最前線へと足を運ぶ自衛隊からの情報が得られる。更に、新幹線の1.5倍速いといわれる自衛隊のヘリを利用させていただいて、それで車載基地局の運搬ができれば、早期復旧に繋がる」と期待感を示した。

自衛隊としては、NTTグループとの災害協定を結んでいるが、KDDIと協定を結ぶことについて、別のメリットがあると強調する。「KDDIはNTTと異なり、社内に衛星イリジウム携帯を持っている。非常時は被災地で通常の通信が利用できない恐れがあるため、衛星電話が出来るというのは大きい」(陸上自衛隊担当者)

一方のKDDIは、被災地への迅速な復旧活動支援を自衛隊に後押ししてもらうだけではなく、相互に情報共有を行なうことも連携の骨子に挙げている。

こうした災害協定の締結は、東日本大震災を契機として3年越しの願いだったとKDDIの村本氏は語る。昨年11月に防衛省との中央協定を結んだことで、中部方面隊や今回の東部方面隊との協定締結に至った。KDDIとしては先日、九州の西部方面隊と共同訓練を行ない、単独でも南海トラフ沖地震を想定とした災害訓練を行なっている。この方面隊との協定は、1年に1回以上、両者での会議や訓練を行なう予定で、今後、詳細に連携内容を詰めていく予定だという。