カゴメは3月17日、便秘になることでいくつかの栄養素の吸収効率が低下する可能性が高いことが判明したと発表した。
同成果は、同社ならびに大妻女子大学の青江誠一郎 教授らによるもの。詳細は、3月27日~3月30日に開催される「日本農芸化学会2014年度大会」にて発表される予定だという。
腸は、食事として摂取した食べ物に含まれる栄養素を吸収するという重要な役割をもっているが、便秘になると腸の動きが鈍くなり、便が滞ってしまう。今回の研究は、これまで当たり前のように考えられていながら、確かめられてこなかった、便秘で腸の調子が低下している人は食べ物に含まれる栄養素もうまく吸収できていないのではないか、という疑問の解明に向け、便秘傾向者と非便秘傾向者とで、栄養素の吸収効率と、体内の栄養状態が影響すると考えられる酸化ストレスの強さの比較を行ったという。
被験者となったのは、大妻女子大学の健康な学生65名。1週間あたりの排便回数が5回以下または硬い便の出現率が50%以上である便秘傾向者と、1週間あたりの排便回数が6回以上かつ硬い便の出現率が50%未満である非便秘傾向者に分類(便秘傾向者34名、非便秘傾向者は31名)し、調査が行われた(便の硬さは6段階で表され、今回の便秘傾向者はその内、硬さの割合として1段階目と2段階目を対象としたとする)。
具体的には、便秘が栄養素の吸収効率に与える影響を調べるため、摂取した栄養素の量(被験者の食事内容から算出)と、そのうち体内に吸収された栄養素の量(尿中の栄養素濃度を指標)とを比較。尿中栄養素濃度を吸収の指標とした理由について研究グループは、水溶性の栄養素の場合、尿中の濃度が高いほど体内に存在する量も多いと報告されているからと説明している。
比較した結果、便秘傾向者は非便秘傾向者と比べて、各種栄養素の中でもビタミンB2、ビタミンB6、葉酸の吸収効率が低い可能性があることが判明した。
ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸の吸収効率の比較。各栄養素の摂取量と尿中濃度との関係を被験者ごとに平面上にプロットし、相関関係を直線で近似的に表現した図。直線の傾きが大きいほど、九州効率が高い可能性を表す。 *:p<0.05(共分散分析) |
また、栄養素が十分に体内に行きわたらないと、老化やがんなどの原因となる酸化ストレスを抑えられず、肉体が受けるストレスの度合いが増すことが考えられたことから、2つの対象群に対し、酸化ストレスの強さを示す尿中の指標(イソプラスタンおよび8-OHdG)の濃度測定も実施。その結果、便秘傾向者では両方の指標について尿中濃度が有意に高く、酸化ストレスを強く受けていることが判明したとする。
この要因の1つとして研究グループでは、便秘傾向者では非便秘傾向者と比べ、酸化ストレスを抑制する効果がある抗酸化ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなど)の栄養状態が良くない可能性が考えられると説明している。
なお、今後について研究グループでは、整腸作用が期待される同社保有の植物性乳酸菌「ラブレ菌」を便秘傾向者に摂取してもらい、便通状態を改善させた後、栄養素の吸収効率および酸化ストレスの状態が改善されるのか否かの調査などを行っていく予定だとしている。