Nominumは12月9日、メディア向けの事業説明会を開催した。同社は、インターネットサービスの基盤のひとつでもあるDNSをメインの事業としており、グローバルで利用されているDNSソフトウェアの90%以上を作成している。

ISPなど通信事業者に提供する同社のDNSキャッシュサーバーは、1日に1兆2000億回ものクエリを処理しているという。

2013年10月には、DNS事業の第二の柱として、旧来から提供しているネットワークプロテクションを、機能強化とともに「ThreatAvert」と製品名を変更して発表。これはネットワークセキュリティ製品として、アクセスコントロールやドメイン名によるフィルタリングなどを提供するもので、日本では2004年からパートナーとなっているSCSK(当時は住商情報システム)から2014年以降に提供される予定となっている。

そして2014年に発表を予定している第三の柱が、DNSをベースとした個人のインターネットアクティビティをマーケティングに活用するというDNSアナリティクスソリューションとなる。

これは、同社の顧客でもある通信事業者などを対象に、通信事業者がその利用者へのエンゲージメントを高めることを目的としたサービス。利用者がほとんど意識することもなく毎日行っているDNSサーバへの問い合わせを、マーケティングに活用しようというものだ。

例えば携帯会社の例を考えると、携帯A社の利用者がある日、携帯B社の案内ページを見ていたとする。携帯A社はその行動をDNSサーバの情報から得て、加入者情報として持っている住所と組み合わせることで割引情報のダイレクトメールを郵送したり、あるいは携帯A社のサービスを利用している際にお得なクーポンを提示したりといったことが行える。

この背景には、グローバルの通信事業者にとってのマーケティングコストの課題が挙げられる。加入者情報に加え位置情報なども持っているが、それを加入者とのエンゲージメント強化に活かしきれていないと同社では見ている。OTTへの高いエンゲージメントを示したとしても、通信事業者にはあまりエンゲージメントを感じていないのではないだろうか。そして、これが加入者の新規獲得費用や維持費用の多大なコストにつながっているということだ。

他の例では、OTTの動画サービス(YouTubeなど)を見ている加入者に、自社で運営しているVODサービスを提案してみるといったことも可能で、このようなサービス提供を通じて、加入者とのエンゲージメントを高められるとしている。

DNSをベースとしてアナリティクスは、加入者が閲覧したWebサイトを時間軸に添って追うことができ、また今何を欲しているのか(何を探しているのか)といったライブなデータを入手できるといった価値がある。一方で、取得できるのはドメインまでで、またクリック遷移のデータなどは得られないため、これですべてを網羅できるものではない。

同社でもこのDNSアナリティクスを、ビッグデータ解析の補完や他のマーケティングソリューションに今の加入者行動情報を結び付けられる付加的なものとしている。

とはいえ、これをマーケティングに利用する場合には、利用者側の同意が必要となる。同社では「サービスに加入した直後に許可をと言ってもそれは難しいが、徐々にサービスとのエンゲージメントを高めることによって加入者も許可してくれるだろう」とする。

Amazonのレコメンドサービスのように、購買情報を提供することによって得られる価値(オススメ商品)に肯定的な人もいるが、まだまだこのようなサービスへの抵抗感は大きいだろう。正式な発表は2014年1月を予定しているDNSアナリティクスだが、加入者から理解を得られるかどうかがひとつの鍵になるだろう。