東日本大震災の地震・津波は、太平洋プレートの日本列島の下への沈み込みが要因となって発生した。太平洋プレートは、東太平洋の「中央海嶺」で湧き上がったマグマが固まった海洋地殻で作られ、西方に水平移動をしている。そのマグマは地球深部のマントルが溶けて、上昇してきたものだ。海洋研究開発機構などの研究チームは、海洋地殻の最下部を構成する「層状はんれい岩」を世界で初めて採取したと発表した。

採取したのは、ガラパゴス諸島西方約1,000キロメートルの中央海嶺近くの「ヘス・ディープ海盆」で、水深約4,800メートルの海底下約100メートル。米国の科学掘削船「ジョイデス・レゾリューション」を使い、2012年12月から今年2月までの航海中に掘削した。一般的な海洋地殻は海底下約6,000メートルの厚さで、最上部の「海洋堆積層」、マグマが固まってできた上部地殻の「玄武岩層」、下部地殻の「はんれい岩層」からなる。採取地点は地殻の深い割れ目で、はんれい岩層が直接露出している場所とみられる。

試料を分析したところ、マントル最上部でできた、鉱物が結晶化していない「初生マグマ」と、鉱物が結晶化して分離・分化したマグマの両方の組成が観察された。このことは、海洋地殻下部において活発なマグマの混合作用が起きていることを示す。地球内部の構造やマントルの挙動、プレート境界における地震や火山活動などのメカニズムの解明につながるという。

研究論文“Primitive layered gabbros from fast-spreading lower oceanic crust”は英科学誌『Nature』(オンライン版)に掲載された。

図1. 今回の掘削地点周辺(黄色い丸印)

図2. 中央海嶺の下の構造予想図。一番下の緑色の部分がマントルの最上部

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