NTTドコモは11月13日、LTEの次世代通信方式である「LTE-Advanced」向けの無線伝送技術「Smart Vertical MIMO」を新たに開発し、世界で初めて基地局アンテナ1本で1.2Gbpsを超える屋外での走行伝送実験に成功したと発表した。

2015年度中にドコモが提供開始を予定しているLTE-Advancedの通信サービスにおいて、1Gbpsを超える通信速度を実現するにはアンテナ4本相当のMIMO伝送を行う必要がある。そのためアンテナ数の増加による設置場所の確保やコストの増加が課題であった。

Smart Vertical MIMO技術は、LTE-Advancedの通信サービスにおいて、1Gbps以上の伝送速度を基地局アンテナ1本で実現する技術。従来のMIMO伝送技術では、偏波技術を用いた、アンテナ1本で最大2ストリームのMIMO伝送が限界であった。同技術により、アンテナ4本相当の高速・大容量のMIMO伝送をアンテナの1本で実現できるため、省スペースかつ省コストでエリア構築が可能となる。特に都市部などのアンテナ増設に空間的な余裕が少ない環境において、通信速度を向上させることができる。

1本のアンテナで4本相当の高速・大容量伝送が可能なSmart Vertical MIMO技術

同技術は、電波の受信状態の良い携帯電話に対しては、1本のアンテナを上下2つのグループに分割し、さらに偏波技術を用いることでアンテナ4本相当の伝送速度が実現できる。さらに電波の受信状態の悪い携帯電話に対しては、グループ分割を解除し、エリアの広さを優先して通信サービスを提供する。

アンテナをグループ化すると、アンテナ性能が劣化してエリアが狭くなるため、利用者の通信状況に対して適応的に伝送方法を切替えて、最適な通信環境を提供するという技術となっている。

垂直方向素子のグルーピングを環境に適応させることで、最適な通信環境を提供できる

ドコモの屋外伝送実験は、2013年7月に神奈川県横須賀市の郊外環境、2013年11月に相模原市の市街地環境で実施された。3.9GHz帯の100MHzの周波数帯域幅を利用し、Smart Vertical MIMOに適用可能な基地局アンテナ1本と、携帯電話端末に相当する移動局を車に搭載した測定車を2台使って、屋外を走行して実験を行った。

伝送実験では、1本のアンテナを上下2つのグループに分割し、さらに偏波技術を用いることで4ストリームの2ユーザによるマルチユーザMIMOを実現した。今回の実験で、世界で初めて、基地局アンテナ1本で2台の移動局に対して、合計1.2Gbpsの通信速度をMIMO伝送することに成功したという。

基地局アンテナ1本で1.2Gbpsを超える屋外での走行伝送実験に成功した

ドコモでは、LTE-Advancedの提供開始後、早い段階で同技術を実用化させるために開発を進め、ネットワーク品質の向上に努めていくとしている。