Applied Materials(AMAT)のDisplay Business Group(AKT)は、次世代の高解像度/高画質液晶/有機ELディスプレイの製造を可能とする第8.5世代(G8.5)ガラス基板対応の酸化物半導体TFT向けCVD装置「Applied AKT-55KS PECVD」、ならびにPVD装置としてG8.5対応品「Applied AKT-PiVot 55K DT PVD」、第5.5世代/第6世代対応品(G5.5/6)「Applied AKT-PiVot 25K DT PVD」を発表した。
AKT-55KSは、IGZOやIGGOなどの酸化物半導体TFTを形成する際に課題となる水素濃度を低減する技術を採用することで、同濃度の低減を実現。これにより、品質の高い膜質を実現することを可能にしたCVD装置。基本的なシステムのアーキテクチャは、同社が提供する従来型のFPD向けCVDと変わらないが、酸化膜の化学反応は従来膜のものとは異なることから、それらに対応する3つの技術を搭載したという。
1つ目は「Enhanced HCG(Hollow Cathode Gradient)」。HCGは一般的なCVDに比べてより強いプラズマをチャンバ内にて高い均一性で発生させることを可能とする技術で、窒化膜を高い均一性を持たせて成膜するために必須となるという。
2つ目と3つ目は「Gas deflector」と「Enhanced CSD(Center Support Diffuser)」で、CVDのチャンバはガスがチャンバ上部から下部へ流れていくが、deflectorを経由することで、バッキングプレートとの間でガスを均一に拡散することが可能となり、基板全面にガスを吹き付けることが可能となる。またCSDは、ガスの流れをコントロールする技術で、成膜に必要な最適なガス量などをより細かく管理することが可能になったという。
同装置はG8.5(2200mm×2500mm)のガラス基板に対応しているが、厚さは近年のトレンドとして薄ガラス化の要求が高いことから、0.5~0.7mmのものに対応。最大5つのプロセスチャンバを接続することが可能なほか、2スロットのロードロックチャンバが1つで、メカニカルスループットは65枚/時となっている。
一方のPiVot 55K/25Kは、酸化物半導体の持つポテンシャルを引きだすことを目的とした3つの課題(膜の均一性の向上、パーティクルによる欠陥の低減、膜質の向上)を解決を図ることを可能とするPVD。
これらの課題の解決を目指し今回、同社が従来から活用している独自技術「ロータリーカソード」に、新たに1チャンバ内を2トラック(Dual Track:DT)とする技術を開発。これにより、従来はチャンバから別のチャンバに移動の際には、一度トランスファーチャンバを介するという手間がかかっており、パーティクルの発生の可能性もあがってしまっていた問題を、処理を終えた基板と、新たに投入される基板を別トラックで扱うことで解決することに成功した。この結果、搬送系の省略が可能となり、装置の省フットプリント化やチャンバ数の削減が可能となったほか、パーティクルの発生も抑えることが可能いなったという。
なお、酸化物半導体は低温poly-Si(LTPS)に比べてマスク枚数を削減しつつ、高解像度化、低消費電力化を図ることが可能であり、必然的にパネルの高性能化と低コスト化を両立させることが可能となる。また、a-Si TFTに比べトランジスタサイズを小型化することが可能であり、光の透過率の向上が図れるようになることから、同社では国内外のG8.5対応工場での酸化物半導体へのリプレースや競争力を確保したい新規工場への導入の促進などを図っていければとしている。