京都大学は7月19日、22塩基程の小さなRNAであるマイクロRNAの内「miR-24」と「miR-125a-5p」が関節リウマチ患者の血液で増加していることを発見したと発表した。

成果は、京大 医学研究科の吉富啓之准教授(次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)、同・村田浩一大学院生(整形外科学講座)、同・伊藤宣特定准教授(リウマチ性疾患制御学講座)、同・布留守敏特定助教らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間7月18日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。

関節リウマチは進行する関節破壊を起こし、日常生活に多くの障害が生じる病気で、国内では約60万人の患者がいるといわれている。30歳から50歳位の働き盛りの女性に起こりやすく、その社会的損失は非常に大きい。早期診断・早期治療が重要だが、現在診断に用いられているリウマチ因子や「抗CCP抗体」などの検査が陰性の患者は早期では3割ほどおり、陰性の場合には確定診断が遅れてしまうことが指摘されていた。また血漿中のマイクロRNAは新しい種類の検査マーカーで、これまでがんの分野で診断に有用であることがわかっていたが、関節リウマチに特徴的な血漿中マイクロRNAに関しては知られていなかったのである。

今回の研究では、768種類のマイクロRNAの発現を関節リウマチ患者と健常人の血漿で解析し、miR-24とmiR-125a-5pが患者の血漿で増加していることが確認された。104名の関節リウマチ患者と102名の健常人の血漿でこれらのマイクロRNAが測定され、miR-24とmiR-125a-5pはそれぞれ63.7%と53.9%の感度、89.5%と89.5%の特異度を示したのである。安定して発現する内部標準のマイクロRNAとしては「miR-30a-5p」が適していた。

またこれら3つのマイクロRNAを組み合わせた複合値は、より高い感度(78.4%)と特異度(92.3%)を示したのである。さらに抗CCP抗体が陰性の場合でも同様に、miR-24、miR-125a-5pおよび複合値はリウマチ患者を区別することができた。このことから、血漿中マイクロRNAは抗CCP抗体が陰性の患者に対しても診断に有用であると考えられるという。

今回の研究では、すでに発症している関節リウマチ患者の、ある一時点での解析が行われたものだ。今後は発症前または早期の患者ではどうなのか、また治療によってどのように変化していくのかを調べていく必要があるという。またマイクロRNAは遺伝子を抑制する働きを持つが、miR-24、miR-125a-5pがどのような遺伝子を制御して関節リウマチにかかわっているのかは今のところ不明だ。これらの研究を行うことにより、関節リウマチの早期診断だけでなく、新しい治療法の開発へとつながると考えているとしている。