ルネサス エレクトロニクスは7月23日、次世代スマートメータ向けに電力メータに必要な24ビットΔΣ型A/Dコンバータ(ADC)や高精度リアルタイムクロック(RTC)などの周辺機能を1チップ化したマイコン「RL78/I1B」を発表した。

近年、新興国を中心として世界的に電力需要が増加しており、世界市場における電力メータの設置台数は2016年に16億台以上となる見込みという。これに対し、各地の電力会社は、増大する運営コストの低減のため、メータそのものの低価格化、メータの消費電力低減、盗電などによる電力ロスの削減を目指している。このような中、電力メータ用マイコンにも、動作中および停電中における低消費電力動作、外部部品の集積化、耐タンパ性向上や故障検出などの機能安全が求められている。

同製品は、新たに1チャネル当たりの消費電力0.53mAを実現した低消費電力型4チャネル 24ビットΔΣ型ADCを搭載、従来品「78K0R/Lx3-M」と比べ、約1/4の低動作電流を実現している。これにより、6MHz動作時に3.3mAと、単相2線式メータシステムにおける電力計測時消費電力を従来比で約60%削減することが可能となり、停電時のバックアップバッテリー駆動においても約2倍以上の長時間動作に寄与する。

また、電力メータのシステムコスト低減のため、最小0.96ppmの分解能で時計誤差補正可能なRTCを搭載した。従来の電力メータシステムでは、正確な時計機能実現のために外付け専用ICが使用されていたが、RTCと内蔵温度センサを組み合わせて温度補正する方式を採用することで、高精度な時計動作を実現。外付け部品の削減により、システムコストを約8%低減させることが可能となった。

さらに、32.768kHzのサブクロック水晶振動子を基準クロックとして、ハードウェアで自動的に周波数を補正する「高速オンチップ・オシレータ・クロック周波数補正機能」を新規開発した。これにより、従来品「78K0R/Lx3-M」、「78K0/Lx3-M」に比べ、高速オンチップオシレータクロックの発振精度を±5%から±0.05%へと向上させている。また、従来マイコンでは、PLL(Phase Locked Loop)で外付けサブクロックからシステムクロックを作り出す構成が一般的だったため、外付けサブクロック水晶振動子が停止した場合、CPUの継続動作が保証できなかった。これに対し、同製品では外付けサブクロック水晶振動子が停止し、周波数補正機能が使用できなくなっても高速オンチップオシレータクロックは±1%の精度で発振を継続し、CPUが動作可能であるため、外部部品起因によるシステム破綻を防ぐことができ、電力メータの安定動作が実現するとしている。

加えて、安全な電力メータシステムを構築するため、従来は外付けトランジスタで構築されていたバッテリバックアップ回路を内蔵し、バッテリを直結可能な専用端子を搭載した。同回路は停電を検知して電源をバックアップバッテリへ切り替えることができるため、停電中のCPUやRTC、その他周辺機能の動作を保証する。さらに、停電時も外部割込み命令の監視やRAMデータ保持、外部スイッチ押下によるLCD表示などに対応しており、電力メータの筐体開封検出やEEPROMへのデータロギングなど、耐タンパー性、機能安全に優れた電力メータシステムを実現することができる。

この他、ADCは、プログラマブルゲインアンプ(PGA)、位相調整回路、ハイパスフィルタなどの電力計測に必要な機能を内蔵しており、0.5%の計測精度であるIEC62053の規格を満たしている。これにより、より正確な課金が可能となる。

なお、同製品は、フラッシュメモリが64/128KB、パッケージが80/100ピンLQFPのそれぞれ4品種をラインナップ。サンプル価格は内蔵するメモリ容量やパッケージによって異なるが、フラッシュメモリが128KBで、パッケージが100ピンLQFPでは320円。すでにサンプル出荷を開始しており、量産は11月より開始する。2014年には、月産200万個を計画しているとコメントしている。

ルネサスのスマートメータ用マイコン「RL78/I1B」