カゴメは7月10日、ブロッコリースプラウトに多く含まれる成分(スルフォラファングルコシノレート)から派生する「機能性成分スルフォラファン」のたな作用として、悪酔いの原因物質であるアセトアルデヒドの代謝を促進する作用を見出したと発表した。

同成果は同社と米国Johns Hopkins医科大学のPaul Talalay教授らの共同研究によるもの。詳細は「Alcohol and Alcoholism」電子版に掲載された。

アルコールは世界中で嗜好飲料として摂取されているが、日本人などのアジア人の中には、飲酒するとすぐに顔が赤くなる、お酒に弱い人が多く存在することも知られている。そういった人たちはアルコールから変換されたアセトアルデヒドを代謝するための酵素(アルデヒド脱水素酵素:ALDH)のはたらきが遺伝的に弱いこともこれまでの研究からわかっており、その割合は欧米人では5%未満ながら、日本人は44%と言われている。

アセトアルデヒドが高い濃度で長く体内に留まると、悪酔いの原因となるほか、食道がんに罹るリスクは、低活性型の酵素を持っていながら、たくさんアルコールを摂取する人の場合、正常型の人に比べ約10倍に上るとされており、アセトアルデヒドの代謝を速めることができればそうした疾病予防にもつながることが期待されている。

これまでの研究から、ブロッコリースプラウトに多く含まれる成分から人の体内で派生するスルフォラファンは、種々の解毒酵素の活性を高め、発がん性物質やカビ毒など、さまざまな有害物質の代謝を促進することが知られていたが、飲酒時のアセトアルデヒドの代謝に及ぼす影響の報告はなかったことから、今回、研究チームはその可能性の探索を行ったという。

実験は、実際にアルコールを摂取した際のアセトアルデヒドの代謝を、スルフォラファンの摂取が促進するのかどうか、マウスを用いて行われた。具体的には、メスのCD-1マウス(1群9匹)を用い、スルフォラファンを含む飼料、ないしはスルフォラファンを含まない飼料で7日間飼育した後、一晩絶食させ、さらにその後、アルコール溶液を飲ませ、血中エタノールならびにアセトアルデヒド濃度の経時的な測定を行った。

(A)がアルコール投与後の血中エタノール濃度、(B)がアセトアルデヒド濃度の推移。▲がスルフォラファン群(スルフォラファンを含む試料を摂取させたマウス)で、●がコントローグ群(スルフォラフォンを含まない試料を摂取させたマウス。t1/2は血中濃度の半減期でコントロール群と比べて有意差があった(p<0.05)(平均値±標準誤差、n=9)

その結果、血中エタノール濃度の推移は、スルフォラファンを与えた場合と与えなかった場合とで差がなかったが、血中アセトアルデヒド濃度の最高値は、スルフォラファンを与えたグループの方がおよそ30%低い値であることが確認されたほか、血中アセトアルデヒド濃度の半減期(血中濃度が半分になるのに要する時間)は、スルフォラファンを含まない飼料を摂取したグループでは3.34±0.23時間であったのに対し、スルフォラファン摂取グループでは1.77±0.12時間と短縮されることが確認され、スルフォラファンの摂取が、アルコール摂取後のアセトアルデヒド代謝を促進することが示されたとする。

肝臓の細胞においてスルフォラファンがALDH活性におよぼす効果(平均値±標準誤差、n=9、\*:p<0.05、\*\*:p<0.01(0μMまたは0hとの比較))

さらに研究チームは、スルフォラファンがどのようにしてALDHの活性を高めているのかの機構解明を行い、正常なマウスから得た細胞では、スルフォラファンによってALDH活性が上昇するが、細胞核内の遺伝子(DNA)に結合し、その下流の遺伝子の発現を高めるタンパク質「Nrf2」を欠損したマウスの細胞では、スルフォラファン添加によるALDH活性の上昇は観察されないことを突き止めたという。

なお研究チームは、今回の結果は動物実験で得られたもので、実際にヒトがスルフォラファンを摂取することでアセトアルデヒドの代謝が促進されるか否かは今後の検討課題としている。ただし、スルフォラファンを摂取することで解毒に関わるさまざまな酵素の働きが高まることが、これまでにもヒトで確認されていることから、それらと同様のメカニズムを介する今回の作用もヒトで再現できる可能性は高いものと考えられると説明している。