5月にAnalog Devices(ADI)のPresident&CEOに正式就任したVincent Roche氏

Analog Devices(ADI)は7月8日、都内で会見を開き、2013年5月にPresident&CEOに正式に就任したVincent Roche氏が同社の今後のビジネスの方向性などを語った。

同氏は冒頭「半導体という領域でのビジネスの将来を考えたうえで、果たしてチャンスがあるのか否かではなく、チャンスを掴むために、何を実行すべきでるか、を考えている」と語り、これからのチャンスを掴むためにはより高度で複雑なソリューションを提供する必要があることを強調したほか、そうした高度で複雑なソリューションをどうやって提供するかについては、「アナログ技術を中心に、デジタル技術やアルゴリズムなどを組み合わせることで、新たな価値を生みやすくできる」とした。

同社の現行のビジネスセグメントとしては、売り上げの半分近くを産業機器分野が占めており、残りを通信インフラ、コンシューマ機器、オートモーティブ、ヘルスケアで分けている。約5万社の顧客がおり、FAやプロセス制御、エネルギー、計測機器、セキュリティ、航空宇宙・防衛など幅広い領域をカバーしている産業機器分野は同社でも重要分野と見ており、研究開発費の1/3を同分野向けに充てているとしている。

ADIの売り上げに占める研究開発費の推移。Roche氏としては、適正は売り上げの18%だという

一方、製品別の売り上げは半分近くをコンバータが占めており、残り半分をアンプ/RF、DSP、パワーマネジメント、その他のアナログ/MEMSが占めており、今後はこれらを組み合わせたインテリジェントなソリューションを提供していく重要性が高まっていくとする。

Analog Devicesの分野別/地域別売り上げと製品別売り上げ/デザインインの地域比率

また、地域別に見て日本は「デザインインと売り上げの双方で一定の割合を占める地域」と表現するも、ビジネスの傾向が5年程前まではコンシューマ向けが60%超を占めていたが、顧客のビジネス戦略の変更に伴い、30%程度に減ってきており、代わりに産業機器やヘルスケア、自動車などの分野が伸びてきているとし、日本で対応の強化を進めている分野として、ロボット、医療機器、オートモーティブなどを挙げた。

さらに、「ADIとしてもコンシューマ分野に対しては選択的な対応を進めており、力を発揮できる領域に絞り込んでいく一方、BtoBを主眼においた将来的な製品戦略を考えている」とし、顧客のニーズの変化に対応できる体制の構築と、システム技術とコンポーネント技術を融合させることによる新たな価値の提供を図っていくことで、より強固な顧客との関係の構築を目指すとした。

なお、「今、半導体にはMore MooreとMore than Mooreの2つの流れがあるが、アナログ技術を中心に据え、そこにデジタル技術やアルゴリズムを組み合わせることで新たな価値を生み出すことを目指す我々としては、More than Mooreの方向で最先端に立ち続けるのがこれからのADIの方向性」と同氏は語っており、それを実現するためのシグナルチェーンの補完、3Dパッケージングなどの先端パッケージング技術への対応、最先端プロセス技術とRF/マイクロ波などの無線接続技術への理解、そしてバッテリの長寿命化に向けた低消費電力の開発などが必要としており、信号処理を中心に、それらの技術を組み合わせたアナログ/デジタルのシステム化したソリューションを提供することで、「イノベーションとそれによるインパクトを大きなものにする」と意気込みを語っており、ハイエンドな領域を狙えるプラットフォームを数多く生み出すことで、より企業の成長を加速することが可能になることを強調した。

アナログ技術そのものの強化に加え、パッケージングやRF/マイクロ波などの無線通信技術など幅広い技術領域のカバーを図ることで、ハイエンド領域で利用可能なシステムの提供を増やしていくというのが今後のADIの方向性となる