大日本印刷(DNP)は7月2日、ノートパソコンやデジタルサイネージなどの薄型ディスプレイに対応した、静電容量式タッチパネル用電極フィルムを開発したことを発表した。

スマートフォンなど小型のタッチパネルに使用されている電極フィルムの多くが導電材料としてITOを用いているが、ITOは抵抗値を下げられないことから大型化が困難とされていた。また、抵抗値の低い金属の導電材料をメッシュ状に形成した電極フィルムの開発も進んでいるものの、メッシュ部の金属反射による視認性低下が課題となっている。

今回同社は、こうした課題の解決に向けて、銅を製膜したPETフィルムにエッチング加工を施すことで、メッシュ状のセンサを形成した静電容量式タッチパネル用電極フィルムを開発した。

線幅3μmまでの微細な電極の形成が可能なほか、従来のエッチング方式で形成した場合では電極の金属側面が露出し、メッシュ部の金属反射が画像の視認性を損なうという課題があったが、今回、金属の側面を黒化処理を行うことで、これらの課題を解決、銅メッシュの電極パターンを目視で気にせず、高いコントラストで利用することが可能になったという。

また、シート抵抗値は0.3Ω/□以下を実現しており、ITOや銀を用いた電極フィルムと比べも低くなっているため、高い応答性を実現できるほか、取り出し配線部分も銅を使用するため、ITOや銀を使用した電極フィルムでは実現困難な大画面への対応が可能となっている。

さらに、センサ電極との配線も少なくし額縁を狭くできるほか、通常2枚の電極フィルムが用いられるものを、フィルムの表裏に±10μm以下の位置合わせ精度で電極を形成することができるため、フィルム1枚を不要にでき、タッチパネルのさらなる薄型化を可能としている。加えて、ITOなどの硬い導電性材料と異なり、割れやキズが発生しにくいため、曲げて使用するようなフレキシブルディスプレイへの応用も可能なほか、画面が大型化すると目立つ"虹ムラ"と呼ばれる多色のムラも、超複屈折率ポリマー基材を選択することで抑えることが可能になっているという。

なお、これらの技術を採用したフィルムは85インチまで対応できることから、2013年内に量産を開始し、ノートパソコンやテレビ、電子黒板やデジタルサイネージなどの大画面タッチパネルを中心に販売を進め、2014年度で50億円の売り上げを目指すとしている。

視認性が高く薄型化にも対応した大画面タッチパネル用電極フィルム

銅メッシュは3μmまでの線幅が可能

フレキシブルディスプレイへの応用も可能