富士通セミコンダクター(FSL)は5月21日、ハイブリッド車(HEV)などの電気駆動車両に搭載されるバッテリーと電力伝達経路に装備される電源制御に最適な車載向け32ビットマイコン「MB91F552」を発表した。
近年、普及が進んでいるHEVなどの電気駆動車両では、走行時に発生した電力をバッテリーに蓄え、その電力をモータやオーディオ、ライトなどの車内電装品への電力供給、補助バッテリーの充電に使っている。現在、蓄えられた電力をモータや車内電装品に供給するためには、DC/DCコンバータやDC/ACインバータなどの電源変換回路を制御する電源制御システムが必要で、バッテリー電圧や電力供給先の負荷の変動に対応し、安定的に電圧を供給するための電源制御用ICが求められている。
同製品は、CAN、マルチファンクションシリアルなどネットワーク制御機能を搭載した汎用1チップマイコンに、4チャネル同時サンプリング可能12ビットAC/DCコンバータ、浮動小数点演算ユニット(FPU)、200MHz動作のデジタルPWMモジュールなど、デジタル電源制御に最適な各種機能を搭載した。出力電圧などアナログ信号のフィードバックをデジタル化し、演算処理を行った上でPWM波形生成に反映させる、といったデジタル電源制御を容易に行うことができる。また、従来は電源システムの制御は個別部品の組み合わせにより構築していたため、その仕様を変更することは容易ではなかったが、同製品ではソフトウェアでの変更が可能になった。これにより、動作周波数やPWM波形出力タイミングなどを用途に応じて変更できるようになり、電源システムの開発期間削減、システムコストの最適化、システム標準化に寄与するとしている。
また、同製品に搭載されているコンパレータ(信号比較回路)とスロープ補償回路は、デジタル電源制御に加え、DC/DCコンバータなどのスイッチング電源制御方式であるピーク電流モード制御にも対応する。通常動作時は、デジタル電源制御による出力電圧フィードバックを行い、電流変化の大きい場合には電流フィードバックによるピーク電流モード制御機能で対応する。さらに、コンパレータを2チャネル使用することで、電流フィードバックによる過電流保護制御も同時に行うので、電源制御システムの安定性に貢献する。
加えて、個別部品で構成されていたスロープ補償回路を汎用マイコンに内蔵したため、動作マージンの設定が容易になり、安定した電源供給を実現させた。システム全体での調整が容易となるとともに、外部部品の点数を削減でき、低コストで品質の高い電源システム開発が可能になる。
これらによる電源制御システムの性能向上とコスト低減によって、今後さらに普及拡大が期待されているHEVなど電気駆動車両の環境性能の改善に寄与するとしている。なお、サンプル価格は2000円。5月31日よりサンプル出荷を開始する。販売目標は2016年度に200万個としている。