University of Leeds

英リーズ大学の研究者Terry Kee氏ら研究チームは、生命発生のメカニズムを説明することにつながる可能がある発見をしたと「Power behind primordial soup discovered」において伝えた。初期の地球において隕石の飛来およびそこから得られる無機物が、生命発生において何らかのファクターになっていることは広くコンセンサスがとれているが、具体的にどのようなプロセスをたどって無機物が初期の生命へなったのか、その詳しい過程はまだ明らかになっていない。Terry Kee氏らの発見は、こうした初期段階におけるプロセスを解明する鍵になる可能性がある。

人間を含め、生物は体内でエネルギーを利用するためにアデノシン三リン酸(ATP)を使用している。アデノシン三リン酸は、いわば最小単位のバッテリーのようなもので、エネルギーの蓄積または放出を担っている。そうした反応には複雑な酵素が必要になる。初期の地球においてそうした複雑な酵素が存在していたとは考えにくいため、生命発生の時期にアデノシン三リン酸を使用する生命が存在していたというのは説明が難しいところがある。

リンはアデノシン三リン酸やDNAにとって重要な要素だが、不溶性の形をとっていることが多く、化学反応しにくいという特徴がある。ただし、初期の地球には隕石が頻繁に飛来し、地球上では珍しい鉱物もやってきていたと考えられている。 同研究チームは1947年のシホテアリニ隕石落下で飛来した隕石に含まれる成分を使って、初期の地球に相当すると見られる環境を再現。結果、ピロリン酸塩のもっと単純な形の化合物が存在していることを発見したとしている。

同研究チームはこうしたより単純な構造の化合物が、初期の生命においてアデノシン三リン酸の代替として機能していたのではないかと推測している。