古河電気工業(古河電工)は12月5日、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究の成果として、ポリマーフリーの高密度カーボンナノチューブ(CNT)線を作製したと発表した。同成果は米国ボストンで開催された学会「2012 MRS Fall Meeting & Exhibit」にて発表された。

電線は電力や通信インフラとして必要不可欠な製品となっているが、例えば自動車に搭載されるワイヤーハーネスは、エレクトロニクス化により、使用量の増加による重量の増加が燃費の悪化、コスト増といった問題を引き起こすこととなっており、軽量化が求められるようになっている。すでに従来の銅を用いた電線の代替として、銅合金やアルミ合金化への代替の動きが進められており、同社でもアルミ合金化に向けた開発を中心に進めてきており、今回のCNTも高強度、軽量で導電性に優れた炭素材料であり、将来の自動車スペースの有効利用と燃費向上に向けた素材になるとの判断から研究が進められてきた。

産業技術総合研究所とともに進められてきた研究では、CNT分散液の作製条件と凝固液の種類の検討を行ってきており、その結果、特定の条件下では、凝固液としてポリマーが含有していない有機溶剤を用いてもCNT線ができることを発見した。このCNT線は絶縁体であるポリマー成分が含まれていないことより、凝固液としてポリマーを用いる従来の湿式紡糸法と比較し、約20倍以上の高い導電率を有しているという。

実際に試作されたCNT線の性能は、同社独自の引き上げプロセスを用いることで約80cmの長さを達成しつつ、導電率は2800S/cm(従来の湿式紡糸法では100S/cm程度)を実現したという。

なお、この値は、通常の銅線に比べ低い導電率ながら、今後は金属よりも高強度で軽量であるCNTの特性を活かしつつ、銅線と同等の導電特性を有する次世代電線の実現に向けた改良を重ねていくことで実用化を目指すと同社ではコメントしている。

今回開発されたCNT線