ニプロと京都大学(京大)物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)は11月22日、胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などを安全かつ効率的に生産できる自動培養装置のプロトタイプを開発したと発表した。
同成果は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究プロジェクト「ヒト幹細胞実用化に向けた評価基盤技術開発」のうちiCeMSの中辻憲夫教授が率いるチームによる研究成果を活用したもので、中辻教授は同プロジェクトにおけるサブプロジェクトリーダー(ES細胞領域)として開発を推進してきた。
多能性を有する幹細胞(ES/iPS細胞)は様々な細胞に分化する能力を有しており、適切に誘導を行うことで神経、心筋、膵臓β細胞など様々な細胞を得る事ができるとされており、創薬における薬効評価や安全性薬理試験などの創薬スクリーニング、発生・分化や疾患メカニズムの解明、再生医療への応用などへの活用が期待されているが、こうしたヒト幹細胞を産業利用につなげるためには、品質の確保されたヒト幹細胞の安定的な大量供給を可能とすることが求められている。
今回のプロジェクトでは、様々な細胞に分化する能力を有するヒト幹細胞の産業利用促進の重要な基盤となる、品質の管理されたヒト幹細胞の安定的な大量供給を可能とする基盤技術の開発が行われてきている。
開発されたプロトタイプは、一般的なシャーレではなく、接着細胞を培養できるよう表面処理を施した培養バッグを使用することで閉鎖系での培養・送液が可能となるため、培養操作中の汚染のリスクを軽減することが可能となった。
また培養バッグでは一度に大量の細胞を効率的に調製できるため、自動培養装置を小型化・軽量化することにも成功しており、これにより一度に10cmシャーレ75枚分までの幹細胞培養が可能となるほか、再生医療・細胞治療を行うような細胞調製室へも設置できるようになったという。