サッポロビールと北海道大学(北大)は11月19日、ビール原料のホップに含まれる「キサントフモール」に、動脈硬化予防効果があることを発見したと発表した。
同成果は同社と同大大学院保健科学研究院の千葉仁志教授、同医学研究科の伊敏助教が、「さっぽろバイオクラスター"BIO-S"」を通じて行った共同研究による成果。詳細は米科学誌「PLoS ONE」電子版に掲載された。
近年、総コレステロールの低下だけでなく、「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」の上昇が動脈硬化を防ぎ、さらには心筋梗塞や脳卒中の危険性を低くすることが報告されるようになってきた。研究分野においては、「Cholesteryl Ester Transfer Protein(CETP:コレステリルエステル転送タンパク質)」と呼ばれるタンパク質の活性が阻害されると、HDLコレステロールが上昇することが知られており、そうしたCETP阻害薬の開発が進められている。
また、こうした作用による動脈硬化予防に効果がある成分を持つ食品成分や天然物は、これまで報告されていなかった。今回の研究で、初めて天然物として、ビール原料のホップに含まれる「キサントフモール」が、CETP活性を阻害することにより、HDLコレステロールを上昇させる効果があることが発見された。
研究では、CETPの遺伝子を導入したマウスに、キサントフモールを0.05%、およびコレステロールを1%混和した餌を18週間摂取させ、血清中のHDLコレステロール、およびCETP活性の測定が行われた。
この結果、キサントフモール入りの餌を摂取したマウスでは、HDLコレステロールが増加し、CETP活性は低下したことが確認されたという。
また、動脈硬化を測定する際の指標部位である、胸部大動脈弓における総コレステロールの蓄積量を測定したところ、キサントフモールを摂取した側では、総コレステロールの蓄積量が減少したことが確認されたという。
これらの試験結果から、キサントフモールは、CETP活性を阻害することで、動脈硬化を予防する効果があることが確認されたこととなった。
なお今後の研究としては、千葉教授は、キサントフモールの脂質代謝への影響について、細胞、動物、ヒトのレベルで明らかにしていく予定とするほか、サッポロビールでは、今回の成果を活かして、キサントフモールの食品や飲料への利用を検討し、グループ全体で商品開発を行うことで、消費者の日々の健康的な生活に貢献することを目指すとしている。