スーパーコンピュータ(スパコン)最大の学会兼展示会である「SC12」が米国ユタ州のSalt Lake CityのSalt Palace Convention Centerで開幕した。
SC12の会期は11月10日から16日であるが、10日、11日はチュートリアルとワークショップが中心で、11日夜の前夜祭で展示会場が開く。そして、12日が本会議の開幕で、今年は、日系人の理論物理学者で超弦理論の創始者の一人であるMichio Kaku ニューヨーク市立大教授が幕開けの基調講演を行う。
Salt Lake CityはGreat Salt Lake(大塩湖)のほぼ南端に位置するユタ州の州都であるが、モルモン教の本拠地としても有名である。標高が1320mと比較的高地であり、筆者が現地入りした11月11日の気温は0℃前後で、屋根や道路には雪が残っている。
米国では、GSAというお役所が身内のコンファレンスに大金を掛けて豪遊していたというスキャンダルが議会で追及され、その結果、国防総省とかエネルギー省とかいう単位で、1つのコンファレンスの費用は最大でも50万ドルという枠が作られ、ローレンスリバモアとかオークリッジとかスパコンと言えば名前が出てくる米国の巨大国立研究所が、予算が無いので、SC12の展示を取りやめるという事態になり、これらの研究所からの参加者もある程度減少するという。
例年のことであるが、SC12では第20回のTop500が発表される。2012年6月の第19回Top500では、米国のローレンスリバモア国立研究所のSequoiaが「京」スパコンを抜いてトップに立ったが、今年はオークリッジ国立研究所のTitanがSequoiaを抜くかどうかに注目が集まる。また、Blue Waters、Stampedeといったピーク性能が10PFlops級のマシンが続々と稼働のステージに入ってきており、トップ10の顔ぶれも相当変わるのではないかと予想される。
また、Crayは、11月8日にCascadeというコード名で開発を行ってきた次世代スパコン「XC30」を発表しており、このマシンの展示と、どこまで技術情報が会議で発表されるかが注目される。そして、テキサス大学のStampedeはIntelのメニーコアのXeon Phiを使うスパコンであり、Intelの展示などが期待される。
今年のGordon Bell賞の候補論文は5件で、その中に、筑波大学の石山/似鳥氏と東京工業大学(東工大)の牧野教授らが「京」スパコンを使い、4.45PFlopsを実現した天体のN-Bodyシミュレーションの論文が入っている。異なる天体計算であるが、BG/Qを使って2.52PFlopを実現した論文も候補になっており、現状では牧野チームの方が高い性能が得られているが、追い込みでフル構成のSequoiaを使って逆転などということも無いとは言えない。この世界は厳しい競争である。