Freescale Semiconductorとイーソルは10月18日、Freescaleの車載向け「Vybrid」用のソフトウェアソリューションの提供で協業すると発表した。

非対称のデュアルコアを搭載した「Vybrid」は、リアルタイムアプリケーションとマルチメディアアプリケーションを同時に1チップで実行できる。今回、イーソルが開発した「Vybrid」デバイス用のソフトウェアプラットフォームを利用することで、電子制御ユニット(ECU)と通信を行うAUTOSAR対応リアルタイムアプリケーションと、ITRON資産を再利用した情報系アプリケーションを効率的に開発できるようになる。また、両アプリケーションを連携させる仕組みを提供する。これらの仕組みにより両社は、ECUの車両情報を用いたドライブ支援や、スマートフォンや車内機器との連携など、高度で多彩な機能とサービスを持つメータクラスタやオーディオ、カーラジオ、カーナビ、リアビューカメラなどのドライバインフォメーションシステム向けに最適なソリューションと説明する。

「Vybrid」は、ARM Cortex-A/Cortex-Mコアを統合し、車載アプリケーションの複雑性とコストを抑えつつ、システムセキュリティを高めることが可能。また、i.MXアプリケーションプロセッサとともに、ARMアーキテクチャをベースとするスケーラブルなソリューションポートフォリオを形成する。主流車種においては、カーラジオ、エントリレベルのインフォテイメントシステム、再設定可能なグラフィックメータクラスタなどに最適で、製品化を容易にするリファレンスソフトウェアも合わせて提供される。

今回の協業により、ARM Cortex-M4コアに、AUTOSARメソドロジ支援ツール「eSOL ECUSAR」のAUTOSARベーシックソフトウェア(BSW)を移植し、CAN通信でECUから車両情報などを取得するサンプルアプリを試作。今後市場のニーズに合わせて、AUTOSAR BSWの自動生成もできる「eSOL ECUSAR」を「Vybrid」デバイスに本格的に対応させ、商品化することが検討されているという。

また、ARM Cortex-A5コア上のマルチメディアアプリケーション向けには、TRONアーキテクチャを引き継ぐイーソルのリアルタイムOS「eT-Kernel」をコアとし、各種ミドルウェア、開発ツールを統合したT-Kernelベースソフトウェアプラットフォーム「eCROS」が提供される。「eCROS」は、カーナビやカーオーディオ、ドライブレコーダ、車両周辺モニタなど、多くの車載情報システムに採用された実績があり、カーナビとスマートフォンの連携技術「MirrorLink」の動作実績もある。さらに、ARM Cortex-A5コアとARM Cortex-CM4コア間で通信できる仕組みを用意しているため、双方のアプリケーションで取得した車両情報などを共有できる。今後は、洗練されたグラフィックス機能など、ドライバインフォメーションシステムに必要な機能を追加し、さらに「Vybrid」向けソフトウェア・プラットフォームを進化させていく方針を示している。

なお、ソフトウェアプラットフォームの提供に加え、AUTOSARや機能安全を含む、車両情報系、制御系両方の豊富な実績と経験ベースとするイーソルのプロフェッショナルサービスも合わせて提供される。これにより、Freescaleとイーソルは、「Vybrid」ベースの車載ソフトウェア開発者を強力に支援していくとコメントしている。

図1 ソフトウェアプラットフォームブロック図