免疫生物研究所(IBL)と生物資源研究所(生物資源研)は8月29日、ワクチンの共同開発および試料提供契約(MTA)を締結したと発表した。
生物資源研は、2012年8月14日にインフルエンザウイルスの病原性を除去した人工的に合成した遺伝子を用い、ワクチンに必要なタンパク質の生成に成功したことを発表している。一方のIBLは、生物資源研が開発したその人工的に合成した遺伝子を、同社の遺伝子組換えカイコの技術により、繭中にワクチン用タンパク質を生成するカイコを作出した後、ワクチン用タンパク質を抽出・精製する。その後、生物資源研が、そのタンパク質の活性を精査し、ワクチン化の検討を行うなど、その実用化を目指して展開していくという予定。
これまでも、カイコを利用したタンパク質の生産において、「カイコバキュロウイルス発現系」を用いた手法が行われてきたが、同社の技術はこの手法とは異なり、繭中に目的タンパク質を生成させるため、抽出精製においては不純物の激減、生産系では設備費の軽減が図れ、さらに安全性に優れ、恒常的に安定生産が可能となり、生産効率を飛躍的に上げることが可能となるという。
また、現在のインフルエンザワクチンは主に鶏卵などから生産されているが、これらの方法に比べ、低価格で大量のワクチンを生産することが可能と考えられるという。
なお今回の開発が成功した場合、バイオ医薬品の生産系において、同社の技術を用いた遺伝子組換えカイコによる生産というイノベーションをもたらすこととなり、新しいカイコ産業の創出ができるものと期待していると両社はコメントしている。