名古屋大学は、「小型高効率分散型バイオメタンエネルギーシステム」を開発。生協の学食から出る生ゴミを原料にしてバイオメタンの生成し、生成したバイオメタンを低圧(10気圧未満)で吸着剤に吸着させて貯蔵する技術を開発したことを発表した。すでに発電および自動車用燃料などに活用しているという。
成果は、名大エコトピア科学研究所の長谷川達也教授らの研究グループによるもの。なお、8月31日開催のテクノ・フェア名大2012において、バイオマス自動車の試乗が行われる。テクノ・フェア名大2012の申し込みWebサイトより事前申し込みが可能で、1回の乗車定員は3名、8月28日15時の時点では14時と15時の回が開いている状況だ。
長谷川教授らは、インド工科大学デリー校と共同で2010年9月にインド中部Madhya Pradesh 州Tikamgarh近郊の寺院と農村に1基ずつ小型バイオガスプラントを寄贈・設置した実績がある。
今回開発された小型高効率分散型バイオメタンエネルギーシステムは、バイオマス廃棄物である生ゴミを原料とする再生可能エネルギーシステムだ。これまで廃棄していたものをエネルギー源として利用できるわけで、開発途上国のみならず、今後の日本のエネルギー供給源の1つとなる可能性がある。また、災害に強い分散型エネルギー源として、地域の電力供給、輸送・加熱用燃料供給に用いることができる点も魅力だ。
高圧ガスの取り扱いに関しては安全性の確保のため、経済産業省の「高圧ガス保安法」(1Mpa=10気圧以上の圧縮ガスの製造には、「高圧ガス製造保安責任者」の資格が必要)、厚生労働省の「労働安全衛生法」(第二種圧力容器:容器内圧力0.2MPa=2気圧以上、内容積40L以上の容器には「検定、保安検査、年1度の定期自主検査、設置届出」が必要)という法的規制があるため、それらに該当しないよう、バイオメタンの圧縮後の圧力を1Mpa未満、容積40L未満のバイオメタン燃料タンクを用いて研究が行われている。
研究で利用されている燃料タンク(40L未満)に貯蔵できるバイオメタンガスは約2m3で、1回のガス充填で走行距離としては40kmだ。また、このバイオメタンガスを生成するには14kgの生ゴミが必要だという。今回のシステムではメタン発酵槽が小型高効率のため、学生食堂から出る生ゴミ1kgから144Lのバイオメタンガスを得られる点が特徴だ。これは既存のメタン発酵システムの2倍以上となる。
なお長谷川教授らは現在、より大容量のバイオメタンガスを吸着できる吸着剤、バイオメタン吸蔵容器の研究開発を進めており、同じ容積の燃料タンクでさらに多くのバイオメタンを貯蔵できるようにしていく予定だとしている。