7月6日から10日まで、オーストラリアのシドニーで開催された「Imagine Cup 2012」の世界大会において、東京工業高等専門学校(東京高専)の「Team coccolo」がソフトウェアデザイン部門で2位になるという快挙を成し遂げたことは、すでにお知らせしたが、7月12日には、日本マイクロソフト本社において、帰国報告会が開催された。
今年で10回目となるImagine Cup 2012(主催:Microsoft)の世界大会には、35万人を超える予選参加者の中から選ばれた350人(75カ国)、合計105チームの学生が参加。「想像しよう。地球規模の難題がテクノロジの力で解決される、そんな未来を。」というテーマに沿ったソフトウェアやゲーム作品を出展し、アイデアと技術力を競い合った。
審査においては、ソリューションの優位性のみならず、多国籍の審査員に向けた英語プレゼンテーションや質疑応答、実機を使用したデモンストレーション、市場におけるビジネス展開の可能性などが総合的に判断された。
日本からは、ソフトウェアデザイン部門に「Team coccolo」、ゲームデザイン部門にトライデント コンピュータ専門学校(名古屋)の「Team Blossom」と、バンタン ゲームアカデミー(東京)の「Esperanza」の計3チームが参加。
結果は、「Team coccolo」が72チーム中の2位、「Team Blossom」はトップ5入り、「Esperanza」はトップ10入りを果たした。なお、2位は過去10回の大会の中で、日本チームとしては最高位となる。
「Team coccolo」は、自律的かつ効率的な節電を可能にしたソリューション「All Lights! 可視光通信による省電力照明システム」を開発。「All Lights!」は、LED照明機器群のソリューションで、陽の当たる窓際やテレビの前などの「照明が不要なくらいもともと明るい」エリアを自動的に判断して明度を下げることで、室内全体の自律的かつ効率的な節電を可能にするもの。
「Team coccolo」は、現地入りしてから、作成したシステムが大きすぎて展示ブースに入らない、電源ケーブルがオーストラリアの法律上の問題で使用できないなど、さまざまのトラブルにみまわれたが、それらの困難を乗り越えての準優勝であった。
代表の大川さんは、「オーストラリアでは、予想外のアクシデントがいくつもあったが、チーム全体のアイデアとチームワークがあったからやり遂げられた。大会では、とにかくお祭りだから楽しもうという気持ちを忘れないようにした。1位を取れなかったことは悔しいが、何か足りにないものがあったかなと考えても、これ以上はできないという最高のプレゼンをしたので悔いはない」と述べた。
「Team coccolo」の世界大会でのプレゼンテーションの様子は、以下のYoutubeの動画で確認できる。
そして大川さんは、今後Imagine Cupにチャレンジする人に「とにかく、自分たちが大会を思い切り楽しむことが大切。そうしないと、もし優勝できなかったとき、大変だったという思いしか残らない」とアドバイスした。
また、賞金の1万ドルの使い道については、「これまで支えてくれた人たちと一緒に、お世話になった先生が転勤した沖縄に行ってみたい」と語った。
「Esperanza」は、東北大震災のがれき処理作業をモチーフにしたアクション型ロールプレイングゲームを出展。処理に携わるさまざまな役割のキャラクターを操作して作業を完遂することで、世界中のユーザーに復興問題の重大さを伝えることを目的とした。「Team Blossom」と同じく予選ラウンド約300チームのうちからオンライン審査を経て勝ち残り、Top10入りした。
世界大会での「Esperanza」 |
代表の前川さんは、「大会ではFinalistになれなかったが、自分たちのソリューションは世界に発信していけるものだと思っている。ただ、ゲームのUI、エクスペリエンスの部分をもう少し煮詰めていかないと、世界に通用するゲームにはならない。また、プレゼンテーションについては、審査員の方に納得感、感動、さわやかさが残るプレゼンが必要だった」と、反省点を述べた。
ただ、このチームのメンバーは、4月から社会人になっており、大会前に内容を煮詰める時間が取れないというハンディがあったようだ。
「Team Blossom」は、一筆書きをベースにしたXbox/Windows向け3Dパズルゲーム「ブルーム*ブロック」を出展。このゲームは、幼い世代に自然保護の美しさを教える「環境教育」を目指しており、ステージ上に配置されたブロックを操作し画面に花を咲かせていくことで、美しい自然を取り戻すことができる。
「Team Blossom」はCoccoloと同じく、日本代表として6年ぶりの決勝戦進出を果たし、予選ラウンド参加チーム約300チームの中でTop5入りした。
代表の馬場さんは、「Imagine Cupの参加は、学校としてはじめてだったので、手探りの状態で行った。トップ5入りは、子供たちが楽しめるグラフィックデザインや実際に幼稚園でテストしたことが評価されたと感じている。足りなかったのは、ブラジル、韓国の人のように、前にぐいぐい出て行くパワー、エネルギッシュな部分で、今後はそういった点を身につけていきたい」と語った。
マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長 加治佐俊一氏は、「年々競争が厳しくなっていく中で、3チームがすばらしい成績を挙げ、日本に希望や自信を与えてくれた。非常に有意義な大会であった」述べ、2位になった「Team coccolo」の勝因については、「周りのサポートをうまく取り入れていると感じた。これまで厳しいアドバイスを行ったが、自分たちの良いところを壊さないように取捨選択して、世界大会に臨んでいた。大会が進んでいくにしたがって成長していくのを感じた」と語った。
なお、来年の世界大会は、ロシアのサンクトペテルブルクで開催される。