岡山大学は、「間葉系幹細胞」の全身移植が「強皮症」のような難治性自己免疫疾患を劇的に治癒させ得ること、さらにはその治療メカニズムの一端を解明したと発表した。

成果は、岡山大 医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野の秋山謙太郎助教と、米国南カリフォルニア大学シー教授及び中国南京大学のスン教授らとの共同研究によるものだ。研究の詳細な内容は、5月4日付けで米科学誌「Cell Stem Cell」に掲載された。

近年、間葉系幹細胞を移植すると移植された生体では免疫寛容状態が成立し、さまざまな全身性免疫疾患に対して治療効果を有することが確認されている。しかし、その治療効果の詳細なメカニズムに関しては不明だった。今回、秋山助教らの研究グループは、全身性免疫疾患を有する疾患モデル動物を用いてその詳細な治療メカニズムを初めて明らかにした形だ。

そのメカニズムは、移植された間葉系幹細胞がタンパク質「MCP-1」を放出し、生体の免疫担当細胞であるT細胞を呼び寄せた上で、受容体「FAS」を介してT細胞の細胞死を誘導することにより成立するものだった。

近年、全身性免疫疾患に対する間葉系幹細胞移植の治療効果が散見されるようなったが、その詳細な治療メカニズムが解明されたのは初めてだ。このことにより、今後、治療効果が得られるメカニズムが明らかになったことにより、治療効率が高く、副作用が少ない幹細胞移植治療、さらには幹細胞由来因子を用いた自己免疫疾患治療の開発に繋がると期待されると秋山助教らは述べている。