激しい運動をした時の脱水状態や大量の水分摂取などによって体液濃度が変化しても細胞の大きさを一定に保つ細胞膜の水の通り道を、岡田泰伸・自然科学研究機構 生理学研究所長や京都大学の沼田朋大助教、森泰生教授、ドイツ・マックスプランク研究所のフランク・ヴェーナー教授らの共同研究チームが発見した。

岡田所長らが発見したのは「トリップ・エムツー(TRPM2)・デルタシーチャネル」と呼ばれる分子で、周囲の体液濃度が高くなってもこの分子が細胞からの水の通り道となり、細胞が縮んで死んでしまうことなどを防ぐ。研究チームはさらに、この分子が「サイクリックADPリボースヒドロラーゼ」という分子と結合することで活性化されることも明らかにした。サイクリックADPリボースヒドロラーゼは、HIV(エイズウイルス)感染やがん、Ⅱ型糖尿病、オキシトシン分泌などに関与することが既に知られている。

多くの研究者が探し求めていた重要な分子が発見されたことで、さまざまな病気、特にオキシトシン分泌異常が原因と考えられている自閉症などの発達障害や、HIV感染、がん、Ⅱ型糖尿病との関連について今後、研究の進展が期待できる、と岡田所長は言っている。

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