情報通信研究機構(NICT)、古河電気工業(古河電工)及びオプトクエストは3月8日、光通信において「19個の通路(コア)を持つ新型の光ファイバ(マルチコアファイバ)」と「7から19のコア可変の空間結合装置」を用いて、世界最高クラスとなる305Tbpsの信号伝送実験に成功したと発表した。
現在、スマートフォンなどの普及によりインターネットの通信量は飛躍的に増加しているため、インターネットなどの情報通信の伝送路を支える光ファイバは、物理的な伝送容量限界を迎えつつある。
その限界を超えるために現在研究されているのが、ファイバ中に複数の光の通路(コア)を持つ「マルチコアファイバ」だ。しかしマルチコアファイバは、それぞれのコアから漏れた信号の干渉(クロストーク)による信号劣化(画像1)や、数10μm間隔の複数のコアから同時に信号を取り出す際の難易度の増加(画像2)によって、7コアが限界と考えられていた(画像3)。
画像3。近年の光ファイバ通信技術の進展。シングルコアファイバでは、100Tbpsを超える伝送には限界があるため、近年、マルチコアファイバの研究が始められている。NICTは、2011年、7コアファイバによる伝送実験を成功させていた |
今回、NICTは、コア数を「19」にまで増設し、世界最高クラスとなる毎秒19コア×100波長×172Gbps=305Tbps(誤り訂正による7%冗長性を除く)、伝送距離10kmの伝送実験を行い、すべてのコアにおいて良好な通信品質を確認した。
今回の実験では、古河電工が製造した「19コアファイバ」とオプトクエストが製造した「既存の光ファイバ19本とマルチコアファイバを接続する19コア空間結合装置」を利用している(画像4)。
数10μm間隔の19本ものコアで伝送品質を保ち、それぞれのコアが独立に既存の光ファイバと結合することは、これまで実現できないと考えられていた。しかし今回の実験では、既存の7コア対応結合方式(7コアファイバ用に開発された、マルチコアファイバとシングルコアファイバの結合において、テイパー(円錐)加工されたファイバ束を用いる結合方式、あるいはレンズを用いた結合方式)に比べて、接続技術の品質を改善することに成功した形だ。
結合装置では、コアからの信号を階層化する方式によって、コア数の拡張が可能となった。今回の実験の原理に基づいたコア数の拡張や、先端の光変復調技術等を組み合わせて1コア当たりの伝送量を増やすことが可能であり、1本の光ファイバでペタビット級の超大容量伝送が期待できるという。