富士通セミコンダクター(FSL)は2月23日、低消費電力化・小型パッケージ化を実現した携帯機器向けマルチモード・マルチバンドRFトランシーバLSI「MB86L11A」を開発し、2012年5月上旬よりサンプル出荷を開始することを発表した。

スマートフォンでは、軽量・薄型化と長時間連続動作を実現するために、搭載されるLSIなどに対し低消費電力化が求められている。また、2010年末より各国にてサービスが開始されたLTE通信方式を含め、国々により異なる通信方式(モード)と帯域幅(バンド)にローミング用途として、対応するマルチモード・マルチバンド対応への要求が強まってきているが、携帯電話機器メーカーの開発環境の負担が増加するなどの課題があった。

同製品は、そうした要求に応えるために、FDD-LTEとTDD-LTEの両方式への対応を含め、HSPA+、WCDMA、GSM、EDGE、EDGE-EVO、CDMA、TD-SCDMAのすべての通信方式と、各国における周波数(帯域としてはFDD-LTEでバンド1~21、23~25 、TDD-LTEではバンド33~41、CDMAバンドでクラス0、1、6、15、WCDMAバンドでは1~21、24、25、TD-SCDMAはバンド34、39、EGPRSバンドでGSM、EGSM、DCS、PCS)に対応を図ったRFトランシーバLSIで、ダイバシティ用に受信回路を2系統内蔵しつつ1チップ化することで、従来品比で消費電力、パッケージともに約30%の削減を実現している。

独自の新回路方式によるエンベロープトラッキング機能(ET:Envelop Tracking)を採用により、フロントエンド部の送信用パワーアンプ(PA)の電力制御を行い、送信電力効率の向上を果たしたほか、アンテナチューニング機能(AT:Antenna Tuning)により、アンテナ端までのインピーダンスを調整することで、電波の送信出力を最適化し、送受信効率を高める携帯電話のRFシステム回路部の低消費電力も実現可能となり、携帯機器の連続動作時間の延長を可能としている。

さらにベースバンドLSIとのインタフェースとしてMIPI規格に準拠した3G DigRF(バージョン3.09)と4G DigRF(バージョン1.0)の両方を搭載したほか、フロントエンド部の外部パワーアンプ、アンテナスイッチなどのRFシステム部品との制御インタフェースであるMIPI準拠のRFFE、SPI、GPOインタフェースを搭載することで、さまざまな制御インタフェースを持つフロントエンド部品をRFトランシーバLSIから制御することが可能だ。

加えて、携帯電話のRFシステムに使用する場合、LNAを内蔵し、SAWフィルタ不要、かつ高集積化されたRFトランシーバとして6.6mm×6.6mm×0.9mmの小型パッケージ(0.4mmピッチ)の1チップLSIとして利用できるため、外付け部品点数の削減と省スペース化を図ることが可能なほか、通常受信用に9ポートとダイバシティ受信用に6ポートの受信ポートを用意したことで、従来以上に安定した通信状態と高感度受信を実現できるようになっている。なお、送信部には8ポートを搭載し、マルチモード・マルチバンドPAにも対応するという。

同社では同製品について、販売初年度で月産100万個の販売を目指すとしている。

富士通セミコンダクターが開発したマルチモード・マルチバンドRFトランシーバLSI「MB86L11」