TANAKAホールディングスは、田中貴金属グループの田中電子工業が高信頼性の金製ボンディングワイヤ「GPH」と銅製ワイヤ「CFB-1」および「CHA」の計3製品の販売を1月13日より開始すると発表した。

GPHは超高信頼性の金合金ボンディングワイヤであり、175℃の高温下で現行品の約2倍の4000時間まで接合部の信頼性を維持する。金と適度な親和性を持つ金属を含有させ、接合部分の金属の拡散速度を最適化できるため、ハロゲンフリー樹脂の半導体におけるボイドの形成を大幅に抑制することが可能となっている。

自動車のエンジン制御用やカーナビゲーションシステムなどの車載電子機器の他、産業用機器といった高い信頼性が求められる機器の半導体配線に適しており、15~38μmのワイヤ線径で販売可能。

CFB-1はベア銅製ワイヤであり、材料組成と表面性の最適化により柔らかく接合性に優れた接着が可能で、半導体製造の歩留まり低下につながるチップ割れやステッチボンディング(基板へのワイヤ接合)の剥がれを低減できる。100万回の接合後でも接合強度の低下がなく、安定的に連続ボンディングが可能で、半導体の生産ラインにおける歩留まりを向上することが可能だという。

また、銅表面にパラジウムを被膜した銅製ワイヤ「CLR-1A」の代替としての使用も可能で、CLR-1Aに比べて約30%のコストダウンを図ることができる。パソコンやスマートフォン、AV機器、ゲーム機といった汎用機器のICやLSIの配線材に適しており、18~70μmのワイヤ線径で販売可能。

CHAは太線の銅製ワイヤであり、パワーデバイスなど大電流通電用の半導体配線材として、現在主流のアルミ太線から代替できる。同社の特別な加工装置と焼鈍装置を用いて、単純な銅線加工では困難である均一な微細結晶粒の配置を可能にしたことで、パワーデバイス向けに銅製ワイヤを実用化することに成功した。

アルミの融点は660℃と低く、大電流の通電で溶断することもあるが、銅の融点は1,083℃と高く、電気抵抗はアルミよりも低いため、同一のワイヤ線径で比較すると、CHAは電気伝導性を約40%、溶断電流値を約30%、それぞれ向上することが可能。販売可能なワイヤ線径は200~500μmとなっている。

なお同社では、世界のボンディングワイヤ市場において約40%のシェアを有しており、2014年下半期までに50%に引き上げることを目指している。今回発表した3製品は、現行品からの置き換えによる市場シェア拡大を狙うもので、月間4億円の販売を目指すという。

GPH(右手前)、CFB-1(左)、CHA(右奥)