九州大学(九大)は、体内で毒素を無害化するプラスチック抗体の設計指針を一般化することに成功したと発表した。同大大学院工学研究院化学工学部門の星野友助教らとカリフォルニア大学、スタンフォード大学、静岡県立大学との共同研究によるもので、成果は米科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of USA:PNAS」オンライン版に近日中に掲載される予定。

近年、がんやリウマチなどの特効薬として、抗体医療が有効であることが示されている。抗体医療は、がん細胞を標的とした場合を例にすれば、そのがん細胞が持っている正常細胞にはない目印を頼りに、そのがん細胞だけを攻撃する抗体に似た薬を使う療法のことだ。ただし、抗体医薬は高価であること、また分解されやすいために扱いが難しいという問題点があった。

今回、研究グループが開発したのは、安価なプラスチック原料のみから合成した数100nmサイズの微粒子で、抗体と同じように体内で毒素を無害化できることが示された。また、原料の配合日を最適化することでプラスチック抗体の動物体内での活性を最大化し、なおかつ、プラスチック抗体の副作用を抑制する方法を一般化したという。

なお、このプラスチック抗体は安価で、壊れにくいために次世代の医薬品として期待されるという。プラスチック抗体はカリフォルニア大学で合成され、動物実験は静岡県立大学で実施された。

プラスチック抗体を注射したことにより、マウスの血液内に存在していた毒素が肝臓に移動していく様子(撮影:静岡県立大学 奥直人 教授)