APSがもたらすSIerのビジネスチャンス

Parallels Automationに追加できるモジュールを前回紹介したが、その中のSaaSモジュールに採用されている技術のひとつとして、APSがある。クラウドでのビジネスチャンスを拡大する素晴らしい技術なので、ぜひ紹介しておきたい。

APSとは「Application Packaging Standard」の略称で、パラレルス社が中心となって策定したSaaSアプリケーションを配信するための仕組みだ。APSでSaaSアプリケーションをパッケージすることで、ホスティング業者は、他社のSaaSアプリケーションを自社の商品としてParallels Automationに組み込み、容易に販売できるようになる。ホスティング事業者が、SaaSアプリのリセラーとなるのである。

これは、独立系のソフトウェアベンダーにとっては、大きなビジネスチャンスをもたらすはずだ。ホスティング事業者を、自社のSaaSアプリケーションの販売チャネルとして活用できるからだ。

クラウド化が進むこれからの時代、アプリケーションは、シュリンクされたパッケージを購入してきてローカルPCにインストールして使用する形式だけでなく、SaaSアプリを使用する形式が増えていくはずだ。特に、ITに対して継続的にかつ多額には投資できない多くの中小企業にとっては、オフィス系から基幹業務系まで、SaaSを有効利用できれば、導入や維持コストなどのメリットが多い。

残念ながら、まだまだこのようなSaaSアプリケーションの提供は世の中に浸透してるとはいえない。しかし、APSを使えば、ホスティング事業者を通じて、Parallels Automationを使っているホスティング事業者の販売チャネルに乗せることも可能になるわけだ。また、SaaSアプリの言語をローカライズできれば、海外での販売も期待できる。Parallels Automationは、ワールドワイドでホスティング事業者に利用されているソフトであるメリットだ。

さらに、このことはソフトウェアベンダーだけでなくエンドユーザーにもメリットがある。それは、SaaSアプリをホスティング事業者のコントロールパネルを通して購入、決済、管理でき、一元管理が行えることだ。これらの管理画面などは、必ず、IDとパスワードがつきものだから、利用するサービスが数社になるだけでも意外に面倒なものだ。これがホスティング事業者のIDだけで行えるのは、地味ながら大きなメリットであるはずだ。

中小企業へのクラウド推進の決意

2回にわたりSpeeverを支えるParallels Automationについて紹介した。Parallels Automationが、ライド社の業務効率化に大きな役割を果たしていることがわかっていただけたであろう。

ではなぜ、ライド社はParallels Automationを導入したのか。そこには、ホスティングサービスをはじめてから10年を経た現在、未曾有の震災を経験した日本で、ライド社のサービスの主な対象である中小企業に対してなにかしらのアクションを起こしていくことが責務であるとの思いがある。

「中小企業に対しての変革を起こすサービスを提供していかなければならない」これが、現在のライド社の根底にあるキーワードである。

これまでのITに対する投資は、経営体力のある大企業でないと継続的にできないことが多かった。しかし、大企業ではなければ導入できなかったシステムも、クラウドを利用すれば中小企業でも導入することができる時代がすぐそこまでやってきている。そのためにも、社内業務をソフトウェアで自動化できることは自動化して省力化し、そこから生まれた資金やマンパワーを、新しいサービスの提供などに費やせるようにしたわけだ。

ライド社は、未来を見据えて今回のSpeeverの完全リニューアルを行った。そこには、中小企業にこそクラウドを利用して欲しいとの思いと、それを推進しようとする決意があるのだ。

パラレルス社は、中小企業のクラウド利用を推進するために、ライド社のように中小企業を顧客に持つサービスプロバイダ向けにソリューションを提供している。ライドとパラレルスの思いは、ぴたりと合致しているわけだ。