Parallels Automation導入のメリット

さて、「Parallels Automation」が、ホスティングサービス事業者のための強力なツールであることはおわかりいただけただろうか。

しかし、筆者は思ったのだ。「Parallels Automationがあれば、サーバーと通信環境といったインフラを用意さえすれば、誰でもクラウドサービスをビジネスとして始めることができるのではないか」と。そして、もしそうであるなら「事業者による大きな差別化ができないのではないか」と。

そこで、上記の疑問を土居氏に質問をしてみた。初めの質問に対する回答は「ビジネスを始めることは可能でしょう」とのことだった。しかし差別化については「実は、これこそがポイントなのです。ビジネス展開や運用によって、大きな差がでます」との返答だった。

土居氏がレストランを例に話してくれたので紹介しよう。「レストランは、店舗に厨房、レジ、食材の購入経路があれば誰でも開業できるでしょう。しかし、繁盛するかどうかは、集客のための広告の仕方や運用ノウハウなど他の要素によるものが大きいのです」。要は、商売のためのインフラがあっても、それはあくまでインフラであって、ビジネスを成功させるにはそれ以外の要素が重要であるということなのだ。

ホスティングサービスでも同じことがいえる。Parallels Automationを使えば、比較的簡単にホスティングサービスを開始し必要な作業を自動化できるが、ユーザーを魅了できるかどうかは、各社のノウハウにかかっているのだ。

ビジネスでの利用が当たり前となっている現在のホスティングサービスは、数年前の個人向けのレンタルサーバーとは異なる。サーバーと通信回線さえあれば、確かに見た目ではサービスを提供できる。しかし、エンドユーザーの求めているのは、価格だけではない。高いセキュリティや、止まらない信頼性のあるサーバーなど、品質が重視されている。さらにサービスラインアップやサポート、サービスイメージなども大きなポイントとなるだろう。

ライド社がParallels Automationを導入することによって得たメリットについて、田子氏が答えてくれた。

「Parallels Automationの導入によって、申し込みから課金請求まで、ほぼ完全自動化が実現したことで人件費などのコストを削減でき、その分は、前回紹介したような信頼性の高いサービスを提供するためのハードウェアの設備投資に回すことができた」。Speeverをビジネスに利用する中小企業にとって、サーバーが止まることは大きなトラブルになりかねない。転ばぬ先の杖、トラブルは起きてからだと遅いのだ。

Speeverのサービス管理ツール「PAマネージャー」とサーバー管理ツール「コントロールパネル(Parallels Plesk Panel)」の画面イメージ。設定変更は自動で行われる

堅牢なサーバーインフラを用意した上で、24時間の運用監視などの利用者のメリットとなる付加価値を付けたサービスを適切な価格で提供することが、他社との差別化になるわけだ。

Parallels Automation導入の経緯

なぜ、Speeverの運用にParallels Automationを導入したのか、そのきっかけについても田子氏に聞いてみた。

もともとライド社では、Speeverの運用にあたり、サーバー管理を自動化するツールとしてSphera社の製品を使用していたそうだ。会社の方向性として、業務の自動化は目標とするところだったのだという。

しかし、パラレルス社がSphera社を買収したこと、さらに、パラレルス社が旧システムのマイグレーションを提案してくれたことから、パラレルスの自動化製品への移行を検討。そのような折にクラウドの波が押し寄せてきたために、さまざまな観点から未来を見据えて、より効率的で多様なサービスへの展開が可能なParallels Automationを導入することとなったのだという。

進化していくParallels Automation

蛇足であるがParallels Automationを使わないサービス事業者は、どうやって運用管理しているのかも知りたかったので、土居氏に質問してみた。すると、「おそらく」という条件付きで次のような回答をいただいた。「ひとつは自社開発(SIerへのアウトソーシングも含む)、もうひとつは手作業で力技で管理」とのことだ。

自社開発は、使う側の好きなようにシステムを開発できるが、それに伴う費用がかかるだけでなく時間もかかる。そのため、資本力のある限られた大規模事業者でないと実現は難しい。一方の手作業の管理では、作業効率が悪いため人件費が高くつき、一定規模になったらそれ以上のスケールアップは望めない。

その点Parallels Automationは、SMB向けのホスティング事業者をターゲットとしたパッケージ製品であり、世界中で利用されている。実際「こんな機能が欲しい」と思っていると、いつのまにかその機能が追加されていることも多いという。

これはParallels Automationを利用している世界中の多くの企業からのフィードバックが、常に製品に反映されているためだ。多くのユーザーが企業がParallels Automationのメリットを享受でき、結果的にエンドユーザーにも高品質なサービスを提供できるようになっていくのだ。

今回はSpeeverのサービスを支えるソフトとしてParallels Automationの概要を紹介した。次回は、さらにParallels Automationのコントロールパネルなどについて紹介する予定だ。