VMwareは年次テクニカルカンファレンス「VMworld 2011」において、仮想デスクトップ製品の最新バージョン「VMware View 5」を発表した。今回、Desktop and Application Virtualization Product Marketing DirectorのRaj Mallempati氏に、同製品の特徴や導入メリットなどについて話を聞いた。

VMware Desktop and Application Virtualization Product Marketing DirectorのRaj Mallempati氏

業界に特化した仮想デスクトップを実現

VMware View 5の主要な機能追加・強化としては、「使用帯域幅の削減」「3Dグラフィックスへの対応」「ユニファイドコミュニケーションの統合」がある。

使用帯域幅は75%削減されたが、これを実現した技術的背景について、同氏は次のように語る。「データの圧縮のアルゴリズムを改善することで、帯域幅を減らすことができた。使用帯域幅の削減によって、従来のバージョンよりも多くのユーザーに対し、プロビジョニングを行うことが可能になる」

大規模ユーザーの国内企業の導入事例としては、三菱東京UFJ銀行があるという。

小規模ユーザーからしてみると、これまでは帯域幅の制限からデスクトップの仮想化の導入が厳しかったかもしれないが、帯域幅の削減により、デスクトップ導入を阻む要因が解消されることになるのだ。

3Dグラフィックスへの対応により、DirectXやOpenGLを必要とするアプリケーションが仮想デスクトップ上で利用することができる。主な用途としては、AutoCADや医療業界で使われるイメージングソフトなどを対象としているが、企業ではWindows 7などで採用されているGUIシステム「Aero」などの利用が考えられる。

その背景には、View 5に加えてvSphere 5の機能強化も関係しているという。

同氏は、「ソフトウェアのみで3Dグラフィックスへの対応を実現しているため、ハードウェアの拡張は不要」と強調する。つまり、同製品によって、グラフィックスカードを購入しなくても、3Dアプリケーションを稼働させることが可能になるため、コスト削減が図れるというわけだ。

ユニファイドコミュニケーションは、Mitel、Cisco Systems、Avayaとの提携によって実現される。具体的には、仮想デスクトップからソフトフォンの利用などが想定されている。特にMitelとの連携により、「ネットワークのアルゴリズムを最適化することで、使用する帯域を極力抑えることに成功した」と同氏。

管理者とユーザーの双方にメリットを与えるView 5

国内では、サーバに次ぐ仮想化の対象としてデスクトップが注目を集めていたところ、東日本大震災を契機にデスクトップ仮想化のニーズが急増していると。これに対し、米国では、どのような理由からデスクトップの仮想化を導入するケースが多いのか、同氏に聞いてみた。

同氏は3つの理由を挙げた。「まず、1年半前に新型インフルエンザが流行した際、注目が集まった。続いて、Windows XPからWindows 7へマイグレーションする際のツールとして需要が高まった。3つ目の理由は、スマートフォンやタブレット端末など、PC以外の端末の利用が増えたことがある。こうしたWindowsが稼働していないデバイスから、Windowsデスクトップにアクセスしたいというニーズが出てきたのだ」

こうした背景も踏まえ、View 5ではAndroidデバイスへの対応が開始された。「『Follow me』とわれわれは言っているが、View によって、5ユーザーがいかなるデバイスを使おうと、同じデスクトップ環境を使うことが実現される」と同氏。

これはユーザー側のメリットだが、View 5は管理者側にもメリットをもたらす。1つは、クライアント管理に要する手間とコストの削減だ。デスクトップ全体とアプリケーションを仮想化することで、管理作業が簡素化される。2つ目のメリットとして、ユーザー管理の厳密化によるセキュリティの強化を挙げた。3つ目のメリットについては、「ユーザーにユニバーサルなアクセスを与えることで、ユーザーのさまざまなニーズを満たすことを実現するView 5は、管理者に対してはフレキシビリティをもたらす」と同氏は説明した。

われわれの周りには、スマートフォン、タブレット端末など、Windows以外のデバイスが確実に増えているが、それらを管理して有効活用できている企業はまだ少ないように思う。今後、View 5が実現する環境を必要とする企業は増えていくだろう。