東北大学(東北大)大学院医学系研究科代謝疾患医学コアセンターの片桐秀樹教授、同分子代謝病態学分野の宇野健司助教、岡芳知教授らの研究グループは、太っていくにつれて血圧が高くなるメカニズムを解明したことを明らかにした。同成果は欧州循環器学会誌「European Heart Journal」に掲載された。
過食の際、動物の身体は代謝を活発にすることで、すぐには体重が増えないで済むようにしている。研究グループでは、これまで動物実験により、肝臓に脂肪が蓄積するのに応じて発せられる神経シグナルを発見しているほか、同神経シグナルが、過食時に交感神経活動を高め代謝を活発にすることにより、体重をすぐには増やさないで済ませるようにするメカニズムであることを示していた。
今回の成果は、その研究を発展させ、肥満マウスで同神経シグナルを遮断すると、血圧上昇が起こらないことを見出し、同神経シグナル自体が、肥満の際の血圧上昇に関わることを発見した。
肝臓はカロリー摂取に応じ脂肪蓄積量をダイナミックに変えることができることから、肝臓がカロリー蓄積のセンサとして働き、過栄養時に基礎代謝を活発にして体重が増えないように調節していると考えられている。しかし、現在は、カロリー過剰状態が持続している飽食の時代であり、身体に備わったこのフィードバック機構自体が、皮肉にも、交感神経の活性化を持続させてしまうこととなり、高血圧を発症させることにつながっていることが今回の結果から判明した。
そのため研究グループは今回の成果が、メタボリックシンドロームの本態やその概念を明らかにするとともに、発症機序に基づいた新たな治療法の開発にもつながるものとして期待できるものになると説明している。