2011年7月20日から22日までの3日間、東京ビッグサイトにて「テクノフロンティア2011」が開催されている。同展は、「MECHATRONICS TOTAL SOLUTION」「ELECTRONICS TOTAL SOLUTION」の2つのメイン展示会とボード・コンピュータ展、熱設計・対策技術展、設計支援システム展などの展示会による複合展示会。今回は、同展の中で、電力不足などのエネルギー問題から社会の注目を集めつつあるエネルギーハーべスト(環境発電)関連の出展を行っているブースをメインにレポートしたい。

さまざまなエネルギーハーベスト関連技術を紹介

村田製作所は、圧電素子、振動素子、熱電素子、色素増感太陽電池、などのエネルギーハーベスト関連技術の紹介を行っている。

デモでは、そうした各種素子を2.4GHz帯の電波に乗せてPCとの無線通信などを行うことを見せていた。圧電素子の特性は、加速度0.1G程度で約100μWの発電能力を有している。いずれの素子も、研究開発品としながらも、ユーザーと適用アプリケーションが決まれば、一気に量産まで持っていくことが可能な段階にあるとしており、そうしたアプリケーションベンダとの協業や各素子の適用アプリを模索している段階とする。

村田製作所ブースの環境発電デモ。左上と右下が圧電素子による発電、中央が熱電素子のデモ

圧電素子のデモ。振動による発電を行っている

同社が開発しているエネルギーハーベスト素子各種。いずれも使用したいクライアント企業が居て、適用アプリがあれば、量産化に向けて一気に開発を進める用意はあるという

また、デモではないが全固体リチウムイオン2次電池の展示も行っている。電池サイズは5mm×5mm×1.1mmで容量は20μAh(Typ)、公称電圧1.5V、放電特性0~2Vとなっており、主にエネルギーハーベスト関連などでの適用を目指すとしている。

2012年には量産も!? - 振動発電技術

オムロンのブースでは、近くにブースを構える東京大学の鈴木研究室および旭硝子(AGC)との共同研究成果による振動発電モジュールの開発品をデモ展示している。

デモはTPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)での利用をイメージした回転装置に振動発電素子を用いて遠心力で発電しようというもの。

このほか、整流・充電回路や蓄電素子、電源制御回路、加速度センサ、無線通信モジュールまで一体化させた振動発電モジュールの展示も行っている。同モジュールの仕様は周波数は3~100Hzに対応し、振動加速度0.003G以上で発電する。発電能力としては0.1G、30HzでAC 100μWで、100Hzで300μW程度とするが、KHzオーダーの周波数になると静電誘導方式の同素子よりも電磁誘導方式の方が効率がよくなるため、100Hz以下でのアプリケーションを模索しているという。

TPMSをイメージした遠心力による振動で発電を行うデモ。手前の円筒部に入っているのが振動発電素子

左の黒いのが振動発電モジュール。無線通信にはGazellを用いている

元々、自社のFA機器のセンサなどのワイヤレス化に向けた研究からスタートしたとのことで、2012年中には量産し、なんらかのアプリに搭載したいとの意気込みを見せていた。なお、社内アプリでの適用を想定はしているが、外部で使用したいという企業などがあれば、対応を図っていくとしている。

オムロンブースの裏手には旭硝子(AGC)のブースがあり、そちらでは東大 鈴木研究室やオムロンが振動素子に用いているポリマーエレクトレット材料「サイトップ」の紹介を行っている。

サイトップは電荷保持特性および絶縁性に優れているため、エレクトレット(半永久的な電荷をもつ絶縁体)材料として注目されており、ペリクルなど向けのSタイプ、保護膜/光学膜など向けのAタイプ、保護膜/絶縁膜など向けのMタイプがあり、新たにエレクトレット用にチューニングしたEGGタイプを開発したという。

同材料の表面電荷密度σは-1.5mC/m2と高いほか、専用フッ素溶媒に溶けるため、自在にコーティングを行うことが可能だという(ただしコーティング後、熱キュアが必要)。

そして東大 鈴木研のブースでは、オムロンと同じくサイトップを用いた振動型MEMSエレクトレット発電器の展示を行っている。

MEMSを用いることで、ばねの非線形性を確保し、広帯域への対応を図っている

ターゲット周波数は30~50Hzとしており、オムロンのようなメタル電極ではなくMEMSを用いることで、ばねの非線形性による広帯域での発電を可能としているという。

実用化という点では、無線センサへの応用として振動発電による電力を用いて、80秒ごとに無線送信を行うなどの成果を出しているが、電極間の絶縁性などのチューニングを図るなどの改良の余地は多いとしている。

ただし、同研究室の成果は同ブースと並ぶ形で出展しているテクノデザインにて製品化を目指した取り組みが進められており、2011年中にはエンジニアリングサンプルを出せれば、との期待を覗かせていた。