7月に入り、いよいよ経済産業省から罰則付きの「電力使用制限令」が発動された。企業は本格的に節電に取り組まなければならない。こうした状況も踏まえ、小誌では、企業のITシステムの電力を削減するためのノウハウを紹介するWebセミナーを公開している。本稿では、その一部の内容を紹介したい。

ITシステムの省電力化とコスト削減を図る4つのアプローチ

ITシステムの消費電力が企業活動に大きな影響を与えるようになった。消費電力の抑制は、直接的なコスト削減につながるだけに、IT担当者にとって省電力化はいまや欠かせない取り組みの1つと言える。

特に今夏は、東日本大震災の影響で、経済産業省が15%の節電を目標とする夏期電力受給対策を発表するなど、ITシステムの省電力化に対するニーズがかつてないほど高まっている。今、正に対応を迫られているというIT担当者は少なくないだろう。

では、ITシステムの省電力化とコスト削減を効果的に進めていくために、IT担当者は具体的にどのような対策を講じていくことが望まれているのか。そんな疑問に答えるべく、マイコミジャーナルでは、ITシステムの中でも消費電力が大きいとされるサーバについて、省電力化とコスト削減のノウハウをまとめたWebセミナー『4つのアプローチで実現! ITシステムの「省電力化」と「コスト削減」』を公開中だ。

スピーカーを務めるのは、日本アイ・ビー・エム システム製品事業 ゼネラル・ビジネス 事業開発の中村隆夫氏とシステムx事業部 事業開発の岡田寛子氏。タイトルからもわかるように、このWebセミナーでは、省電力化とコスト削減を実現するためのノウハウを4つのアプローチから紹介するものだ。

セミナーのスピーカーを務める日本アイ・ビー・エム システム製品事業 ゼネラル・ビジネス 事業開発の中村隆夫氏(左)とシステムx事業部 事業開発の岡田寛子氏(右)

特徴は、単なるアプローチの紹介にとどまらず、省電力効果を数字で示したうえで、それを実現するノウハウを具体的に実践できるよう解説している点だ。現在、サーバの省電力対応に取り組んでいるIT担当者にとっても参考になる内容なので、以下、簡単に内容を紹介しておこう。

企業の事情に合った省電力対策が実践可能

まずは、4つのアプローチについて。具体的には、(1)「既存サーバーの設定/構成変更」、(2)「低消費電力サーバーへの移行」、(3)「仮想化技術を活用したサーバ統合」、(4)「消費電力の可視化と制御」を指しており、それぞれ最大で15%、20%、80%、20%の省電力効果が期待できるという。

本誌の読者にとっては周知のことかもしれないが、技術の進歩によって、PCやサーバの消費電力は年々低くなっている。また、サーバ仮想化技術が成熟したことや、サーバに備わるモニタリングシステムを活用することで、きめ細かな電力管理も可能になっている。

省電力化という1点を見れば、そうした最新機器へのリプレースが最も効果的な対策であることは確かだ。しかし、全体の投資コストを考慮すると、すべての機器を新製品にリプレースすることは現実的ではない。4つのアプローチが興味深いのは、そうした事情を考慮しつつ、企業の事情に合わせて省電力化とコスト削減を段階的に実践できるような構成になっている点だ。

例えば、最初のアプローチの「既存サーバーの設定/構成変更」では、投資がほとんどかからないノウハウを紹介しており、やる気になればすぐに実践できるようになっている。また、次のアプローチの「低消費電力サーバーへの移行編」では、サーバ1台を最新サーバ1台にリプレースした場合の効果測定に始まり、HDDからSSDへの交換によってどんな効果があるか、電源を高交換効率電源に交換することによってどんな効果があるかなどを、段階的に紹介している。

Webセミナーは、それぞれ独立した4つのアプローチごとの動画から構成されている。4つのアプローチに沿うことで、自社の事情に合わせて最適な対策を講じることができるというわけだ。

サーバの設定変更で省電力サーバに

もう少し踏み込んで、1つ目の動画である「4つのアプローチとは? &既存サーバー編」(既存サーバーの設定/構成変更)の内容を簡単に紹介しておこう。

省電力化のノウハウとして、まず紹介されるのは、サーバに備わるCPU/メモリの省電力機能を有効にする方法だ。IBM System x/BladeCenterの場合は、uEFI(一般的なPCでいうBIOS)設定で、デフォルに設定されている「バランスモード(Customモード)」を「省電力モード(Acousticモード)」や「電力効率優先モード(Efficiencyモード)」に変更する。さらに、OSの省電力機能を組み合わせることで、デフォルト設定と比較して、省電力モードでは1.0~15%、電力効率優先モードでは1.0~20%の節電効果が期待できるのだ。

次のステップとして紹介されるのは、メモリの交換だ。仮想化機能に対応した最近のサーバでは、大容量のメモリモジュールを搭載できることが当たり前になっている。そのため、メモリを低電圧タイプや新しい世代のメモリに交換することで、サーバの消費電力の低下が見込めるのだ。具体的には、48GBのメモリを搭載したサーバについて、メモリを「DDR3 40nm (1.5V)」から「DDR3 30nm(1.35V)」に変更することで、40%の消費電力を削減できる。

その次のステップは、HDDを消費電力の少ないものに交換する方法だ。HDDの消費電力は、一般的な3.5型SASから、SSDに向かって小さくなっていく。具体的には、「3.5型SAS > 3.5型SATA > 2.5型SAS > 2.5型SATA > SSD」という順番だ。このため、3.5型SASを2.5型やSSDに変更することで、省電力化が期待できるわけだ。そのほか、最新型HDDへの移行や大容量HDDへの採用も省電力化につながる。

中村氏は「今夏に向けて電力不足が懸念されていますが、日本アイ・ビー・エムが全力で節電の支援を行います。すぐに導入可能な方法も紹介しているので、Webセミナーからそのノウハウをぜひ得てください」、岡田氏は「Webセミナーでは、既存のサーバの設定変更から仮想化による省電力化まで、さまざまな企業のニーズに対応した省電力を実現する方法をまとめて知ることができます。System xサーバなど、お得なキャンペーンも紹介しているので、ぜひご覧ください」と語っている。

サーバの設定変更やメモリ、HDDの交換は、すぐに取り組める省電力化のための第一歩とも言える。他3本の動画では、さらに段階を踏んで、省電力化/コスト削減のノウハウが紹介されている。Webセミナーの内容から、自社に適用できる有益な情報を汲みとり、今夏の省電力対策へとつなげていただきたい。