日商エレクトロニクスのグループ会社であるエヌジーシー(NGC)は5月23日、オランダDimenco Displaysと代理店契約を締結、同社の業務用裸眼立体ディスプレイの販売を国内で開始したことを発表した。

NGCは、2006年よりRoyal Philips Electronicsの独自フォーマット「2D+Depth」を採用した裸眼立体ディスプレイの販売を行っており、これまで国内で200台以上を販売してきた。Dimencoは、2006年に元Philipsのメンバーが起業した会社で、立体ディスプレイの開発、およびそれに対応するソフトやサービスの提供を行っており、今般、PhilipsよりDimencoへと製品知財が継承され、さらなる改良が可能となったことを受け、NGCが同社と新たに代理店契約を締結し、先端の裸眼立体ディスプレイの国内販売を行うこととなった。

Philipsが提供する2D+Depthフォーマットによる3D表示の流れ

2D+Depthは、2Dの画像に白黒256階調の奥行きが付加され、それをPhilipsの3D処理チップ「IC3D」を介し、マルチレンチキュラーレンズ(レンチキュラー方式)により、映像を左右に分ける仕組み。パララックスバリア方式では、ディスプレイの輝度を左右に分けるため、ディスプレイで700cd/m2であっても片方では350cd/m2となってしまうほか、マスクを被らせるためコントラストも色領域も落ちることとなってしまう。また、視差数に応じて映像を作成する必要があり、そのデータ量も視差数に応じて増加してしまうのに対し、同社のレンチキュラー方式では、コントラストと色領域はディスプレイの元の性能のままで、かつデータ量も2D+Depthを作成するのみで済むため、2Dの1.2~1.3倍のデータ量に抑えることが可能となっている。

パララックスバリア(視差バリア)方式の原理。レンチキュラー方式はシート状のレンチキュラーレンズを用いて3D表現を達成する

パララックスバリア方式とレンチキュラー方式(Dimencoの方式)との品質比較

データ量もパララックスバリア方式に比べ、Dimencoの方式は2Dの1.2~1.3倍程度と抑えることが可能なため、ネット配信などにも有利となる

さらに今回、改良された方式のディスプレイは、従来のPhilipsが提供していたディスプレイに比べ、パネルサイズが42型から52型へと大型化が図られた(パネル解像度は1920×1080、立体表示解像度は960×540のまま)ほか、視差数を9から28に大幅に拡大し、滑らかな立体表現を実現している。加えて、輝度を500cd/m2から700cd/m2に、コントラストを1500:1から2000:1へと工場させており、これにより立体感の向上も果たしており、視差数の向上と合わせてどこのポイントでもスムーズに3D映像を見ることが可能となった。

従来のPhilipsが提供していたディスプレイ(42型)と今回、提供を開始したディスプレイ(52型)の仕様比較

実際のPhilips(42型)ディスプレイ(左)とDimenco(52型)ディスプレイ(右)の表示比較

2D+DepthフォーマットとIC3Dチップの組み合わせで簡単に2Dを3Dに変換して表示することが可能

産業用途での3D品質も実現。2Dも表示方式の切り替えにより表面のレンズを気にせずに高い画質で見ることが可能

NGCでは、デジタルサイネージのほか、アカデミック分野、自動車や建築などの産業分野でも使用できるレベルの立体表示デバイスとして提供していくとしており、「PureColor、PureContrast、PureBrightness」を実現する裸眼立体ソリューションを自社ならびに親会社の日商エレを通じて販売も行っていくとする。

NGCが考える裸眼立体ディスプレイビジネスの成功に必要となる要素

ソリューションとしての販売となるため、ディスプレイのみならず、CGや実写の2D→3D変換サービスの提供やOpenGLキャプチャソフトやDirectXキャプチャソフトなどのリアルタイムコンテンツ生成ソフトの提供などを予定している。2D→3Dの変換サービスは、同社がカスタマから2Dのコンテンツデータを受付、それをDimencoもしくは国内の変換サービス会社にて変換作業を実施、2~3週間程度をめどに2D+Depthフォーマットの3D映像に変換してカスタマに渡すというもので、価格は1分間で従来の国内の同様のサービス(2D→3D変換)に比べて1/4から1/5となる16万~20万/分としている。

3Dコンテンツを作成するための各種ソフトの提供も行うほか、2D→3D変換を行うサービスも提供していく

さらに、ステレオデータを2D+Depthフォーマットにリアルタイムで自動変換してくれるディスプレイの前段階に挟んで用いる「自動変換ボックス」の提供も2011年第3四半期中に予定している。こちらは、変換サービスのように、人間が3D映像を確認して、最適化を行うといった作業ができないため、同変換サービスよりも画像品質は劣るが、手軽に2D映像を3D映像に変換できるようになる機器として提供する予定としている。

なお、同ディスプレイの同社推奨価格は170万円で、初年度で100システムの売り上げを目指すとしている。

Dimencoのディスプレイの推奨価格は170万円となっている